来年度から事業本格展開へ 脱炭素先行地域選定の陸前高田市 循環型地域づくり推進協で5カ年計画を確認

▲ 脱炭素先行地域として展開する事業の内容やスケジュールが示された会合

 陸前高田市循環型地域づくり推進協議会(会長・佐々木拓市長、委員15人)は27日、市役所で開かれた。市は9月に環境省の脱炭素先行地域に選定されており、同日の会合では先行地域として来年度から本格的に展開する5年間の事業スケジュールが示された。中心市街地や横田地区などを対象エリアに、太陽光発電設備設置促進、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入、電気保安人材の育成・確保、小水力発電設備の整備などに取り組んでいく。(高橋 信)

 

 政府は、2050(令和32)年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。「脱炭素先行地域」は政府目標に先駆け、2030(令和12)年までの脱炭素化実現を目指す地域を指し、国から交付金が受けられる。
 この日の協議会は先行地域選定後初めての開催となり、委員やオブザーバーなど約30人が参加。事務局が脱炭素化にかかる計画の概要、推進体制、事業スケジュールを説明し、意見交換した。
 ソーラーシェアリングは太陽光パネルの下で果樹を栽培する手法を指し、市街地エリアの被災跡地に導入する計画。果樹の木をポットで育てる「根域制限栽培」を採用することで、営農に不向きな被災跡地の利活用につなげる。
 本県沿岸では再エネ事業の推進に不可欠な電気主任技術者の不足が深刻なため、市内の地域電力会社に専門部署を新設し、新たな人材の育成・確保に乗り出す。
 自家消費型太陽光発電設備の設置にかかる補助制度は、来年度をめどに拡充する方針。設備導入目標数は住宅246件、民間施設44件、公共施設5件を掲げる。
 陸前高田浄化センターそばには、下水汚泥と生ごみを原料とするメタン発酵バイオガス発電設備を設ける。発電後に残った消化液を液肥として農家に供給し、肥料費の低減につなげる。運用開始は8年下半期を目指す。
 横田地区では蓄電設備や太陽光発電設備を設置し、災害時などに電力会社からの電気が途絶えても地域内の電力を供給する送配電システム「地域マイクログリッド」を構築する。地区内の河川3カ所で小水力発電も導入する。
 市有林や広田湾の藻場で吸収された二酸化炭素をクレジット化して売却する取り組みも進め、林業・漁業振興の財源に充てる。時速20㌔未満で公道を走行することができる電動車「グリーンスローモビリティ」の車両を追加で購入するほか、市街地に新設されるホテルなどには薪ボイラーを置く。
 同協議会は令和元年、森林資源や再生可能エネルギーなどの地域資源を循環させる地域づくりを総合的に進めていくことを目的に発足。農協、漁協、森林組合、商工会、観光物産協会などの代表者らで構成する。
 先行地域は38道府県の計82件が選定されており、本県からは陸前高田市のほか、宮古、久慈、紫波、釜石の計5市町が選ばれている。環境省は7年度までに少なくとも100件に増やすこととしている。
 佐々木市長は「先行地域の選定を受け、これから5年間、新たな取り組みを行っていくこととなる。循環型地域づくりはイメージしづらいが、先行地域の各事業を通じて、資源循環の意識が広がればいい」と話した。