5歳児健診 全市実施へ 市が来年度から モデル事業の成果踏まえ

▲ 医師と園児が向かい合って行う5歳児健診。モデル事業の成果や課題を生かし、来年度は全市で行う(5月、盛こども園)

 県内に先駆けて本年度に5歳児(年中児)健康診査のモデル事業を実施した大船渡市は来年度、満5歳となるすべての子どもを健診の対象とする。盛町の市総合福祉センターを会場に、こども園や保育園、幼稚園単位で行う方針。現状は3歳児健診以降、6歳児(年長児)対象の就学時健診まで〝空白期〟がある中、集団生活に関する発達などを確認し、円滑な就学や支援体制につなげる。(佐藤 壮)


 本年度のモデル事業は、盛、いかわ、立根、末崎の各こども園で実施。園医である大津小児科ファミリークリニック(盛町)の大津修院長が出向き、対象児一人一人にこども園に関する質問をしたり、一緒に手や指を動かすなどして、コミュニケーション能力や模倣行動、協調運動の様子などを確認した。
 市は健診結果を各園を通じて保護者に送付。二次診察に該当する保護者には、結果説明会の場も設けた。
 保育教諭や保健師も同席する中、大津医師が健診結果を解説するとともに、集団生活や家庭での心配ごと、困りごとを確認。本年度は計76人が健診を受け、「要二次診察」となったのは約3割だった。
 こども園からは「情報を共有でき、保護者にも伝えやすい。就学時前健診よりも前に意識を向けてもらうきっかけになった」、保護者からは「うすうす『多動かな』とは思っていたが、何をすればいいか分からなかった。健診を受け、相談先を知ることができ、早めに行動に移せる」など、好評が多かったという。
 一方で、指定した結果説明会の都合が合わないなど、日程調整が課題に。結果送付の事務負担も生じたことから、市では全市実施に向けたあり方を検討してきた。
 来年度は市内に住所があり、年度内に満5歳となるすべての園児140人余を対象に実施する方針。会場は総合福祉センターでの集団方式とするが、園単位で日程を決める。
 事前に保護者や担当教諭らが問診票に記入。当日は保育教諭と保健師が同席する中で医師が診察し、1人ずつ健診結果を確認。会場控室で待機している保護者に結果を伝える。
 来年度の実施方針は、11月28日に市総合福祉センターで開かれた保育園やこども園などの関係者向け説明会の場で示された。市の説明に先立ち、大津院長が5歳児健診の必要性などを解説した。
 健診の「骨格」として、園内や家庭での行動特性、生活習慣チェック、医学的診察をもとにした総合評価の流れを紹介。「それぞれの発達に関する特性は、誰のせいでもない。理解によって、治療の介入や手当給付、関係者への情報提供につながる」と語った。
 関係機関が連携して早期対応を進める重要性も強調。「診断が遅れ、不適切な対応が長期化すれば、適応障害や各種精神疾患の発症につながる。問題が複雑化し、治療介入や対応、調整が難しくなる傾向もある。究極の目的は、早期に課題に気づいて対応し、二次障害を防ぎ、希望ある思春期や将来につなぐこと」と述べた。
 市内では、出生からの健診は1カ月、4カ月、10カ月は病院で実施。1歳6カ月児と3歳児の健診は、市の施設で行われ、その後は年長児の秋に実施する就学時健診までなかった。5歳児健診は、健診の空白期を埋め、切れ目のない支援や、スムーズな就学準備への移行が期待される。
 国でも昨年以降、5歳児健診を推奨。本年度、同市が県内では先行的にモデル事業を実施して以降、住田町でも従来からの保健師による5歳児相談に加える形で、医師が確認する健診を行っている。陸前高田市も保健師や栄養士らによる相談を始めた。