地元の応援「力になった」 プロトライアスリートの寺澤選手(大船渡市末崎町出身) パラガイド、 国内外で活躍 激動の今シーズン振り返る
令和6年12月4日付 6面

大船渡市末崎町出身のプロトライアスリート・寺澤光介選手(30)=サニーフィッシュ所属、東京都=は、今季のレースを全て終えた。日本屈指のロング選手として国内外の大会に出場するだけでなく、9月のパリ2024パラリンピック競技大会では、トライアスロン競技男子PTVI(視覚障害)で、日本代表選手のガイド役としてレースを完走するなど、活躍の場を広げた。激動のシーズンを振り返り、「選手として充実した日々を過ごし、成長できた。地元をはじめとした多くの応援が力になった」と感謝を込め、来季のさらなる飛躍を期す。(菅野弘大)
昨年8月に東京2020パラ銅メダリスト・米岡聡選手(39)=三井住友海上=とタッグを組み、競技パートナーとして活動を続けてきた。「パリパラ大会メダル獲得」を今季の最大目標に掲げ、挑んだ大会は出場12組中11位。「狙い通りだった」とスイムパートをトップで上がり、順調にバイクパートへと移ったが、砂が浮くコースで落車のアクシデントに見舞われた。懸命な追い上げを見せるも、順位は巻き返せず。それでも、ゴール直前の「ビクトリーロード」は2人で両手を挙げてフィニッシュした。
「スイムでトップに立ち、逃げ切る展開を想定していた。バイクの落車は自分に責任がある。メダル獲得の目標に届かず、満足はしていないが、パラリンピックの舞台に立てた喜びと応援への感謝を胸に完走できて良かった」と振り返った。
大船渡市では、寺澤選手を応援すべく「寺澤光介選手応援プロジェクトチーム」を立ち上げ、応援旗への寄せ書きや関係者による応援メッセージ動画の作成を行うなど、市一体となって寺澤選手を後押し。盛町のリアスホールで実施したパブリックビューイングでは、米岡・寺澤組の勇姿を見届けようと市民ら約100人が参集し、ライブ配信を見ながらエールを送った。寺澤選手は「世界の舞台で戦う不安もあったが、寄せ書きや応援の動画、パブリックビューイングなど、地元からの応援が力になり、背中を押してくれた。パリパラ大会を機に知ってくれた人たちからの応援も増えたことはうれしく、ありがたかった」と感謝する。
パリパラ大会の余韻に浸ったのもつかの間、すぐさまトレーニングを再開し、10月のアイアンマン・マレーシアに出場。「体の調子は悪くなかった」というが「パリパラ大会からの切り替えが心身ともにうまくいかず、結果は良くなかった。それでも、今後連戦をこなしていくうえでの良い経験になった」と収穫を語る。
今季は、個人として3レース、米岡・寺澤組として6レース(パリパラ大会含む)に出場。レースのディスタンス(距離)が異なる活動の両立には難しさもあったというが、「1年間のパラガイド活動を通じて、いい意味で世界との差を感じられた」と手応えを語る。今季は早めにオフに入り、来季は個人のレースに注力してトレーニングを積んでいく予定という。
来年の大会スケジュールは、3月にアイアンマン・ニュージーランド、4月に3連覇が懸かる全日本トライアスロン宮古島大会と続く。9月には、パラガイド活動のため今年は不出場となった佐渡国際トライアスロン大会への出場を予定し、優勝した昨年に続くタイトルを狙う。
そして、自身の「一番大きな目標」と語るのが、世界各地で開かれるアイアンマン・トライアスロン大会に参加して資格を得た選手のみ出場が許される「アイアンマン世界選手権大会」への出場だ。現在はハワイ・コナとフランス・ニースで開催されており、特に長い歴史を持つアイアンマン・コナへの思いが強い。
「アイアンマン世界選手権でトップ10入りが今後の目標」と見据える寺澤選手。「パラリンピックという世界の舞台に立ち、地元の方々に応援していただける機会をつくることができた。トライアスロンはまだなじみの薄いスポーツかもしれないが、大船渡市役所の皆さまなどの力を借りながら自分の活動を発信して、地元を盛り上げられるような選手になりたい」と力を込める。