鍛冶体験で製鉄に興味を 町教委 初の一般向け講座開催(別写真あり)

▲ 熱した鉧を金づちでたたく参加者ら

 住田町教育委員会は7日、町民講座として上有住の民俗資料館で鍛冶体験を開催した。町内では平成30年まで小学生を対象とする鍛冶体験が行われていたが、広く一般を対象とした開催は今回が初めて。町内外からの参加者が体験を通じ、かつて住田でも盛んに営まれていた製鉄産業へ興味と関心を深めた。
 この催しは、自然の素晴らしさを楽しみながら学び、気仙や住田の歴史文化に理解を深めようと企画。町内で行われていた製鉄・鍛冶への関心を高める機会にも位置づけた。
 この日は町内外から24人が参加。講師は、宮古市在住の刀匠・辻和宏さん(70)が務めた。体験では、長さ10㌢ほどのくぎを金づちでたたいてペーパーナイフを作ったり、アルミ製のプレートに工具の鏨で名前や文字を彫る作業を行った。
 加えて、11月に有住小学校の「たたら製鉄」体験で取り出した、鋼の原料となる鉧(けら)での鍛冶にも挑戦。
 たたら製鉄は、木炭の燃焼熱で「餅鉄」などと呼ばれる鉄鉱石から還元する製造法。鉧は、冷えた状態では黒い岩石のような形状だが、熱すると真っ赤に染まり、火花が散る。参加者は熱した状態の鉧を金づちでたたき、還元した際の不純物であるノロ(不純物)を取り除きながら平たく伸ばしていった。
 松本成央さん(高田小2年)は「板に名前とかを彫るのが、難しいけど楽しかった。また参加してみたい」と話していた。
 同町にはかつて、現在の国道397号栗木トンネル近くに栗木鉄山が位置し、明治14年から大正9年まで稼働。操業中の大正2年には、国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇り、最盛期には500人超の従業員がいたとされる。山間の地形を生かした高炉様式は全国的に見ても珍しく、栗木鉄山跡は日本の近代製鉄技術史上においても貴重な遺跡とされており、平成9年に町史跡、11年に県史跡、令和3年に国史跡に指定された。
 町教委では、栗木鉄山跡を有効に保存・管理・活用していくため、本年度から「保存活用等計画」の策定を進めており、今回の鍛冶体験を通じて、製鉄産業への関心も高めていきたい考え。