来年度の重文展示を計画 市立博物館 文化庁の「公開承認施設」認定目指して 市制施行70周年事業に位置づけ

▲ 被災資料を修復し、展示している市立博物館。公開承認施設を目指している

 東日本大震災で被災し、陸前高田市高田町の中心市街地に再建された市立博物館(菅野義則館長)は、国宝や重要文化財(重文)などについて、文化庁長官の事前の許可なく展示できる同庁の「公開承認施設」認定を目指している。申請の条件として5年間で3回重文を公開する必要があり、市は来年度、市制施行70周年記念事業に位置づけ、1回目の展示を行う計画だ。発災からきょう11日で13年9カ月。レスキューを経てよみがえった資料を扱う博物館から、文化財を守り、後世につなげる機運を醸成しようと、具体的な取り組みに動き出す。(高橋 信)


きょう震災13年9カ月


 公開承認施設は国宝、重文などの公開が、文化財の保存上適切な施設で促進されることを目的に、文化庁が平成8年度に定めた制度。承認を受けた施設は重文などの公開手続きを簡素化することができる。
 同庁の規定には承認基準として、文化財の取り扱いに習熟した専任の学芸員2人以上の配置、温度・相対湿度・照度など適切な保存環境の整備に加え、申請前の5年間に重文の公開を適切に3回以上行うとの実績が求められている。全国の承認件数は10月1日現在108件で、うち県内では県立博物館、一関市博物館が認定されている。
 市立博物館は本県沿岸で唯一の公開承認施設となるべく、今後、認定に向けた取り組みを本格化する計画。その第1弾として来年度、日本遺産「みちのくGOLD浪漫」の特別展を実施し、平泉遺跡群から出土した重文も公開することとしている。同特別展は市制施行70周年記念事業を兼ねる方向だ。 
 同展を皮切りに、企画展示室収蔵庫など館内環境の整備、環境調査の実施、学芸員のスキルアップに向けたセミナー受講などを展開していく。
 同館は昭和34年、東北地方第1号の公立登録博物館として開館。同市の自然、歴史、文化の資料を収蔵・展示する総合博物館としての役割を担ってきた。
 震災で施設は全壊し、新館は同じく全壊した同市の「海と貝のミュージアム」の機能を併せ持つ施設として再建。資料保護のため館内の空気環境を安定させる「枯らし期間」を経て、令和4年11月に開館した。
 来館者数は令和4年度が開館からの5カ月間で3万20人、5年度が5万9308人。6年度は4~11月で4万253人となっている。
 被災資料は約56万点に上り、全国の専門機関・大学の支援を受け、約46万点を救出。津波をかぶった資料を修復する安定化処理は国際的にも例がなく、作業は現在も続く。本年度末で39万点超の処理を終える見込みだが、残りはインク書きの紙や皮革など修復技術が確立されていない資料ばかりで、市教委は国からの財政支援が終了する8年度以降も事業を継続できるよう関係機関に要望している。
 山田市雄教育長は「復興した博物館で貴重な国民的財産であり、次世代に継承しなければならない国宝、重要文化財を広く市民、来館者に公開し、文化財の活用に努めるため、公開承認施設としての認定を目指していきたい」と話している。