推進、反対双方から論戦 吉浜地区の太陽光発電計画巡り一般質問 市議会 当局「市民の事業理解に大きな関心」

▲ 環境アセスメントの対象区域となっている太陽光パネル整備計画地=三陸町吉浜

 大船渡市議会12月定例会は12日、2日目の一般質問が行われた。複数議員が三陸町吉浜の大窪山市有地を中心とした民間企業による大規模な太陽光発電事業を取り上げ、推進と反対双方の視点から市当局と論戦を展開。事業者がまとめた環境影響評価(環境アセスメント)方法書に対し、地域住民との意見交換を通じた事業理解などを求める県知事意見が出されてから1年が経過した中、当局は「市民の事業理解に大きな関心を寄せている」との姿勢を示した。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)

 

 太陽光発電事業を取り上げたのは、小松則也議員(新政同友会)と遠藤章議員(清陵会)。小松議員は「推進の立場」と述べ、環境アセスメントの状況や有益性、必要性に迫った。  
 有益性に関し、佐藤雅俊企画政策部長は「未利用状態の市有地を活用することでの地球温暖化防止への貢献はもとより、設置・運営による市税増収、土地賃貸料収入など財政上のメリットが生じる。工事や維持管理における地元企業による経済効果、まちづくりへの参画も考えられる」と答弁。市有地賃貸の可否を決断する市長の「総合的判断」について「時期は不透明。これまでの経緯を十分に踏まえるとともに、これから事業者や県が行う市民らとの意見聴取を注視する」と述べた。
 また、安居清隆市民生活部長は、災害時のエネルギー確保といった効果にも期待を示した一方で「整備する場合には、地域住民を含めた市民の理解のもと、自然環境や生活環境への影響を最小限に抑えることが必要」と述べた。
 遠藤議員は反対の立場から「何をさておいても、地域住民の合意形成と漁業者の理解が絶対不可欠条件と確信するが、その状況には到底及んでいない」と発言。当局の見解を求めた。
 佐藤部長は「土地の賃貸可否に関しては住民理解のみならず、適正性や経済効果などを合理的かつ総合的に勘案し、根拠を示したうえで講じたい。市民の事業理解に大きな関心を寄せている」と答弁。
 また、推進と反対で住民意見が割れていることに関しては「さまざまな見解があることは承知している。それぞれ思いが強いが故に、このような状況になっているのではないか」と語った。
 環境アセスメントは、大規模な開発事業などを行う場合、周辺環境の影響を事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表し、県民や知事、市町村長の意見を聞きながら環境への影響をできるだけ少なくするための手続き。
 市有地を中心に計画する「大船渡第一・第二太陽光発電所事業」の事業者は、自然電力㈱(本社・福岡県福岡市、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也代表取締役)が代表社員となっている岩手三陸太陽光発電合同会社。「元山」と呼ばれる大窪山牧場跡地の約96㌶で計画し、太陽光パネルをはじめ工作物の設置面積は約23㌶としている。
 自然電力は県条例に基づき、環境アセスメントの方法書をまとめ、昨年9月に市内で住民説明会を開催。10月の県環境影響評価技術審査会では、有識者らが事業者側と議論を交わした。
 11月に示された知事意見の総括的事項では「地域住民との適切なコミュニケーションを図る観点から、調査や予測、評価にあたっては、地域住民、有識者、対象事業実施区域の大部分を占める五葉山県立自然公園の管理者、関係行政機関等との意見交換を行い、事業理解を得られるよう努めること」などの内容が盛り込まれ、自然環境各分野の適切な調査や予測、評価だけでなく、地域住民らとの意見交換の重要性にも踏み込んだ。
 自然電力側は知事意見が出された段階で、1年程度をかけて準備書の作成を進め、その間も説明会や専門家の審査を受ける方針を示している。