建設業支援求める声相次ぐ 地元事業者の厳しい経営状況踏まえ市議会で論戦 道路整備やリフォームなど切り口に

▲ 厳しい状況が指摘される大船渡市内の景況。特に復興需要収束や資材高騰などにより、建設業の影響が顕著になっている(資料)

 大船渡市議会12月定例会は13日、一般質問の最終日となり、厳しい経営状況が続く建設業の支援について複数議員が訴えた。今年9〜10月実施の大船渡商工会議所会員事業者を対象としたアンケートでは、昨年同時期の売り上げ状況との比較で「減少」と回答した割合が60・7%と依然として高い状態にあるほか、特に「30%以上」「50%以上」と回答した割合を業種別に見ると、建設業が38・2%と最多だった。道路整備やリフォーム、受注時期の調整など、さまざまな観点から打開策を巡る論戦が交わされた。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)

 

 建設業支援策は、船砥英久議員(改革大船渡)と滝田松男議員(日本共産党大船渡市議団)、森操議員(無会派、公明党)が取り上げた。12日の一般質問でも別の議員が言及した。
 船砥議員は、市民の安全確保と土木関係事業者支援に向けた公共事業の確保を訴えた中で、建設業の雇用維持にも触れながら「市道の維持補修を積極的に推進すべき」「基金を取り崩しても財源確保を」と迫った。
 金野尚一都市整備部長は「比較的規模の小さい市道の維持補修は、市職員による直営作業と単独事業費による委託事業で対応し、年間約1億円、600件程度」と説明。近年は台風などによる倒木処理に加え、地域でボランティア作業ができなくなった道路・河川の除草、土砂撤去が増え、令和5年度は31%を占めることを示した。
 そのうえで「高齢化や人口減少により、今後も土砂撤去や除草費用の増加が懸念されるが、直営作業を可能な限り活用するなどして対応したい」と答弁。松川伸一総務部長は、維持補修は要望の8~9割に対応している状況を示しながら、道路予算確保に関しては「歳入規模に見合った財政運営が課題。限られた財源下で、緊急度や優先度を考慮し、必要な予算を講じる」と述べた。
 滝田議員は、発注物件が減少している中、住宅リフォーム事業助成や地域材利用促進事業の支援額・対象範囲拡大を求めた。
 市住宅リフォーム助成事業は、居住環境の向上、住宅関連産業の活性化などに向けて元年度~5年度に実施し、交付総数144件、助成額が950万円、総工事費は約4億2700万円。6年度は国が掲げるカーボンニュートラル省エネ性能向上などの環境に配慮した工事を必須とした市住宅省エネリフォーム助成事業を創出し、5年度までの事業範囲も含めている。
 金野部長は、リフォーム需要の喚起などにつながった動きに手応えを示したほか、「本年度は、市住まいの省エネルギー改修推進事業も設けた。合わせると6年度予算で358万円で、5年度までの230万円に比べて拡充しており、さらなる拡充は考えていない」と述べた。
 一方、地域材利用促進事業は4年度以降、交付実績がない状況も明かした。「県事業と併用できないことや補助金額の低さといった要因が考えられる。補助対象の拡大、限度額の拡大について検討を進めている」と述べた。
 森議員は「雇用を支える建設業の受注環境は、氷河期だった東日本大震災前よりも厳しい状況」と語り、年度初めの早期発注による発注時期の平準化や、工事日数確保といった利点を強調。柔軟な対応を求めた。
 渕上清市長は近年の年間市営工事は第1四半期(4~6月)8件、第2四半期(7~9月)は25件、第3四半期(10~12月)が17件、第4四半期(1~3月)7件と説明。平準化は安定的な工期確保による長時間労働の是正にもつながる効果を挙げた一方、工事によっては測量や設計に時間を要するほか、補助金・交付金決定後の工事着手が求められる状況にも触れた。
 賃上げに向けた支援に関し、冨澤武弥商工港湾部長は、県の支援金拡充支援に言及。「今後も商工会議所と連携しながら、国や県の支援策活用に向けて幅広く周知するとともに、きめ細かく対応したい」と語った。