「伝統的酒造り」に誇り持ち ユネスコ無形文化遺産登録で注目 酔仙酒造大船渡蔵 日本酒の仕込み作業に熱(別写真あり)

▲ 純米大吟醸酒の「初添え」作業を行う蔵人ら

 寒さが日一日と厳しくなる中、陸前高田市の酔仙酒造㈱(金野連代表取締役社長)は、大船渡市猪川町の大船渡蔵で日本酒の仕込み作業を行っている。こうじ菌を使った日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産登録を受け、国際的に日本酒への注目が高まる中で、蔵人たちは伝統の製法に誇りを持ちながら作業。地域に愛される一品に仕上がるよう、熱い思いを込めて仕事を進めている。(三浦佳恵)

 

 伝統的酒造りは、日本時間の5日にパラグアイで開かれたユネスコ無形文化遺産保護条約第19回政府間委員会で登録が決まった。杜氏・蔵人らがこうじ菌を用い、日本各地の気候風土に合わせて経験に基づき築き上げてきた、日本酒、焼酎、泡盛などの伝統的な酒造り技術が対象となっている。
 酔仙酒造は、平成23年の東日本大震災で陸前高田市高田町にあった国登録有形文化財の社屋、工場、酒蔵を全て流失し、7人の従業員が犠牲となった。その後、24年に新工場「大船渡蔵」を整備し、昔ながらの製法にのっとって日本酒を造り続けている。
 地元産の米や水、自社開発のこうじと〝オール気仙〟の原材料にこだわった商品は、気仙内外から親しまれている。
 今年は、仙台国税局による東北清酒鑑評会の吟醸酒、純米酒の両部で2年連続の優等賞に選ばれたほか、インターナショナルワインチャレンジ・SAKE部門の大吟醸の部で金メダル、純米大吟醸の部で銅メダルに輝くなど、高い評価を受けた。海外への輸出量も増えているという。
 同社では、秋から春先にかけて日本酒の仕込み作業を行う。仕込みは、原料の水、蒸し米、こうじを3段階に分けて混ぜていくもので、一度に原料を混ぜると酵母が薄くなり、雑菌の侵入を許してしまうという。
 13日は、純米大吟醸酒の仕込みとして第1段階の「初添え」が行われた。原料となる米は住田町産の「結の香」で、これを精米歩合40%にした状態で用いる。この日は、蔵人らが米を蒸して適温まで冷ましたあと、水やこうじ、酒母(水、米、こうじを原料に、純粋で強い酵母菌を大量に増殖させたもの)が入った専用のタンクに移した。
 作業はこのあと、徐々に原料の量を増やしながら16日(月)に第2段階の「仲仕込み」、17日(火)に第3段階の「留仕込み」を行い、発酵させる「醪造り」に入る。その後、醪から原酒を絞り出す上槽作業を経て、早ければ来年3~4月ごろに完成する予定という。生産量は約1200㍑を見込む。
 無形文化遺産登録を受け、同社杜氏の金野泰明取締役(48)は「もっと早く日本酒が世界に認められてもいいと思っていた。今回、正式に登録が決まったことで、世界の目も変わってくるだろう。『伝統的な技術で造った日本酒です』と出せるように、さらに磨きをかけて取り組んでいきたい」と気持ちを新たにする。
 また、「海外の方々にも安定的に日本酒を飲んでもらえる時代になり、地元の人、若い世代にも〝国酒〟として日本酒を選んでもらえたら」と思いを託す。