寒風が滋味育む 伝統つなぐ干鮑づくり

▲ 寒風と乾いた空気にさらす干鮑づくり

 二十四節気の一つ「冬至」を21日に迎え、冬の寒さが本格化している気仙地方。大船渡市三陸町内の加工場では、今冬も糸につるした干鮑の列が並ぶ光景が広がっている。青空と明るい日差しが広がる中、寒風と乾いた空気にさらし、伝統をつないでいる。
 干鮑は中華料理の高級食材で、特に県産の干鮑は品質の良さなどから海外でも高い知名度を誇る。もっちりとしたやわらかな食感や、深みのある味わいが広がる。
 加工は今月から本格化。塩水に漬け、ゆでたあとに炭火でいぶしたアワビの身を、90代の地域住民らが手作業で糸を通してつなぎ、屋外に並べる。
 きりりとした冷え込みをやわらげるように、独特の香ばしさが広がる。〝干鮑のれん〟の光景は3月ごろまで続き、香港向けなどに出荷される。
 干鮑は古くから重宝され、交易を支えてきたが、近年は冷蔵・冷凍技術が発達したほか、アワビ収量減などを受け、製造に携わる人は減り続けている。作業にあたる一人は「先人から受け継いできた伝統を守っていかなければ」と力を込める。