2024気仙この一年/記者の取材ノートより① 東日本大震災から13年

▲ みなと公園に整備された「祈りのモニュメント」

県のインフラ復興事業完了 追悼の場新設、文化財再生も進む


 残すところあと10日となった令和6年。気仙では、東日本大震災の発生から13年を迎える中で、県によるインフラの復興事業が完了し、追悼施設が新設されるなどの動きがみられた。地域の児童・生徒による各分野での活躍も元気を届けた。一方、物価高騰や主要魚種の不漁は今年も続いた。県内の最低賃金は大きく引き上げられたものの、人手不足や諸経費の高騰などが産業、地域経済に影を落とした。この一年の出来事を、記者の取材ノートから振り返る。(文中年齢や肩書などは当時のもの)

 県が震災からの復興事業として大船渡市赤崎町で進めてきた普金地区の海岸保全施設(防潮堤など)は、3月に完成した。延長440㍍、高さT・P(東京湾平均海面)7・5㍍の防潮堤や、水門、陸こうなどを整備。この完成をもって、県によるインフラの復旧・復興事業が完遂した。
 県の「社会資本の復旧・復興ロードマップ」によると、気仙で県が取り組んできた社会資本の復旧・復興事業は90事業。海岸保全施設や復興まちづくり、復興道路、災害公営住宅、医療、教育、公園など多岐にわたり、全国からの協力も受けながら進められた。
 今後も県は、被災者の心のケア、なりわいの再生支援などソフト面の事業を継続。震災の記憶・教訓の伝承にも力を入れている。


「祈りのモニュメント」が完成 大船渡

 

 震災発生から13年を迎えた3月11日、大船渡市大船渡町のみなと公園で、市が整備した「祈りのモニュメント」除幕式と震災犠牲者追悼式が開かれた。展望広場に設けられたモニュメントのガラス面が除幕され、「未来へ祈る」の文字が披露された。
 モニュメントを支える10本の柱は、大船渡市の盛、大船渡、末崎、赤崎、猪川、立根、日頃市の各町に加え、三陸町の綾里、越喜来、吉浜からなる「十のまち」を意味する。湾内を見渡しながら静かに犠牲者に思いを寄せるとともに、幾多の津波災害を忘れず、手を取り合って生きていく決意も込められた。
 道路から公園内の広場へとつながるスロープの中間付近には、犠牲者氏名を掲示した芳名板を設置。縦10㌢、幅2・5㌢の板が並び、410人の氏名が3月上旬~中旬にかけて公開された。芳名板は毎年、3月11日を含めた一定期間の掲示を予定している。


旧吉田家住宅、来年5月の公開へ着々 陸前高田

 

 震災で被災した陸前高田市気仙町今泉地区の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」は来年3月の完成、5月の一般公開を目指し、復旧工事が進められている。市内における被災施設の最後の復旧事業で、主屋はほぼ完成。現在は外観工事が行われている。
 主屋は昭和40年代の増築分を除き、県文化財指定時(平成18年度)の姿に戻す。津波で被災した部材を用いた木造建築物の復旧は世界で初めてで、市建設業協会が復旧業務を担う。気仙大工・左官の技を広くPRしようと、現場見学も受け入れている。
 10月には、周辺で火災が起きた際に同主屋を守るための放水銃2基が設置された。