想定実験 途中経過を報告 祈念公園満車時などの津波「車避難」を検討  市有識者会議 広田地区もモデルエリアに選定

▲ 津波避難シミュレーションの途中経過などが報告された会議

 陸前高田市津波避難計画策定アドバイザリー会議(委員長・牛山素行静岡大防災総合センター副センター長兼教授、委員5人)は22日、高田町の市消防防災センターで開かれた。高田地区では高田松原津波復興祈念公園エリアの各駐車場の満車時などを想定し、車避難のシミュレーション(想定実験)を進めている途中経過が報告された。新たに広田地区をモデルエリアに選定し、地域住民と連携しながら津波避難計画を検討することも示された。
 アドバイザリー会議は、災害情報学や防災まちづくりなどにおける国内トップレベルの研究者らで構成し、昨年7月に発足。5回目の会議となった同日は非公開で行われ、▽高田地区津波避難シミュレーションの途中経過▽広田地区津波避難計画の進め方──を協議した。
 高田地区は土地勘のない観光客が大勢集まる祈念公園があることから、シミュレーション結果などを参考材料に避難行動を検討している。
 委員によると、シミュレーションの条件は、高田松原海水浴場を含め、祈念公園内の駐車場が満車となっている状態と、駐車場が6、7割程度埋まっている状態の大きく2パターンを想定。全ての車両が高台に避難した場合の課題を洗い出しており、追加する計算条件などを協議しながら、シミュレーションを継続する。
 一方、広田地区は地元住民による車を含めた避難のあり方を探るため、新たにモデルエリアに選定した。県公表の津波浸水想定区域内に住む住民が他地区より多いほか、高齢化や生活道路が狭いなど、津波発生時に懸案事項となる課題を抱えており、地域事情に詳しい地元住民とともに車避難の現実性などを検討していく。
 委員で、東京大生産技術研究所教授の加藤孝明氏は「広田地区では、ほかの地域にも展開できるような知見が得られればいい。地域の人たちと一緒に計画を作り上げていけるよう丁寧に議論していきたい」と話した。
 県は一昨年3月、最大クラスの津波浸水想定を公表し、同年9月にはその被害想定を示した。陸前高田市における最大震度は6弱、最悪のケースを想定した推計死者数は最大160人。発災後すぐに避難した場合、市内死者数はゼロと示されている。
 県の公表を受け、市は新たに津波避難計画を策定することとし、実現性の高い対策を盛り込むため、有識者でつくるアドバイザリー会議を設置。現行の市地域防災計画では避難手段について「原則徒歩」と定めているが、高齢化の進行などを踏まえ、車避難を含めた適切な避難行動のあり方を検討している。
 委員で、市防災課の中村吉雄課長は「避難計画の策定作業は、シミュレーションを参考としながら丁寧に行っている。市民の命に関わる重要なものであり、策定時期に間に合わせることを重視して作業するのではなく、しっかりとエビデンス(根拠)に基づいた計画とできるよう検討していきたい」と見据える。