ピーカンナッツの実 初収穫 産地化へ一歩前進 植樹から4年8カ月

▲ 試験ほ場での初収穫を喜ぶ大林代表理事=横田町

 陸前高田市が令和2年から横田町で試験栽培している北米原産のクルミ科落葉樹「ピーカンナッツ」の実が、初収穫された。市内には試験ほ場が3カ所あり、いずれの畑でも今年結実が確認されたが、殻の中に実を宿したのは初めて。収穫数は現時点で約20個とごく少数で、依然として試験栽培の段階にあるものの、産地化という目標達成に一歩近づき、関係者が喜び合っている。(高橋 信)

 

殻の中に入っていたピーカンナッツの実(陸前高田市提供)

 9品種65本のピーカンナッツが栽培されている横田町のほ場。苗木の植樹から約4年8カ月がたち、木は大きいもので5㍍ほどの高さに伸びている。
 「通常、収穫まで7、8年かかるといわれている。早すぎず、遅すぎずというタイミングで確認できて安心している」。
 市からの委託を受け、ほ場を管理しているピーカン農業未来研究所の大林孝典代表理事(40)はそう語り、大きさ5、6㌢ほどの実をめでた。記念すべき実はプランターなどに植え付け、「2世」の木となるよう育てていくという。
 ピーカンナッツは米国で大規模に栽培され、抗酸化作用があり、アルツハイマー病予防に有効との研究結果がある。実は柔らかく、渋みがない食べやすさから米国を中心に普及している。
 市は国内におけるピーカンナッツの先進産地を目指し、平成29年7月、原料生産から加工商品製造まで一貫した拠点を形成する共同研究契約を、老舗製菓会社㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市、前内眞智子代表取締役社長)、東京大と締結した。
 市は令和2年4月、異なった立地条件を持つ場所で、市の気象条件に適応した品種を探ろうと、横田町と米崎町の2カ所で試験栽培を開始。鹿児島県指宿市から取り寄せた9品種計90本を育てている。
 さらに、4年には栽培地を拡大し、高田町の中心市街地そばの被災低地部約4㌶に、10品種550本の苗木を植樹。今年3カ所すべてで結実が確認されたものの、大半は熟す前に生理落果しており、実の収穫には至っていなかった。
 また、市内では産地化に向けた取り組みとの両輪で、関係機関による消費拡大の動きも進む。4年には、サロンドロワイヤルが高田町の試験ほ場そばのかさ上げ地に、チョコレートやナッツの販売・加工拠点となる「サロンドロワイヤル タカタ本店」を開業。盛岡、仙台の駅ビルにもテナント出店し、ピーカンナッツの認知度向上に努めている。
 前内代表取締役社長は「初めて収穫でき、殻の中にしっかりとピーカンの実が宿っていたことが分かり本当に感慨深く、感動しかない。これから1年ごとに収穫が増えることを期待しており、ピーカンナッツが市内外の多くの人に愛される陸前高田の産品となることを願っている」と喜ぶ。