住民主体の活動評価 下有住の松日橋 「復興設計賞」を受賞
令和6年12月31日付 2面

住田町下有住を流れる気仙川に架けられ、大雨による増水で流されるたびに地域住民らの手で復旧している「松日橋」。この橋に、復興にかかる技術者や研究者らでつくる復興デザイン会議(徳永幸久会長)から、「復興設計賞」が贈られた。行政などに頼らず住民自ら生活動線を守るという、伝統的かつ持続可能な復旧作業が評価された。
復興デザイン会議は、復興の研究と実践に携わる活動を組織立てし、情報交換や相互研さんの場を提供することによって復興研究の推進、復興政策・復興計画・復興設計技術の確立と普及、技術者・政策立案者・計画者・設計者の教育を推進しようと令和元年に設立。全国大会やシンポジウム、国際セミナーなどを開催している。
同会議が選ぶ「復興政策賞」「復興計画賞」「復興設計賞」がこのほど発表され、松日橋が設計賞を受賞した。
松日橋は気仙川右岸側の中山、左岸側の松日両地域を結ぶ長さ約40㍍の橋。両地域の世帯で構成する松日橋受益者組合(金野純一組合長)が管理している。
橋は長さ11㍍の板4枚をつなぎ合わせるように架けられており、橋脚は「叉股(ざまざ)」と呼ばれる太い枝が二股に分かれた部分を使い、角度を調整しながら組み合わせた上に橋板を乗せる。
普段は橋板の重みと叉股の絶妙な角度にかかる水圧で安定して流されないが、増水時はワイヤロープでつながれた橋板が浮き、橋脚は流れに逆らわずに倒れ、橋の形が失われる仕組み。
橋が流されるたび、地域住民たちが集まり、力を合わせて橋脚や橋板などを取り付けて復旧させる。こうした復旧作業は地域に根付いた光景で、観光地ではないものの見学に訪れる人も多く、町内外に〝松日橋ファン〟を生んでいる。
審査員からは「行政や企業に頼るのではなく、地域に根ざした住民自らの手によって暮らしと風景を再生させる、復興デザインの規範となる」などと高い評価を受けた。
表彰はこのほど、東京都文京区の東京大学本郷キャンパスで開かれた「復興デザイン会議全国大会」の席上で行われ、金野組合長らが出席。金野組合長はステージ上で、松日橋にかける思いを熱く語った。
かつては下有住だけで七つの木橋があったが、現存するのは松日橋だけとなった。金野組合長は「橋によって地域が一つになっている。この橋はいわば〝絆〟のようなもの。なくてもあまり困らないが、なくなるとさみしい、地域の風情だ」と表現する。「里の道だから直すのは当然。今後も、流れたら架け直してをみんなで続けていきたい」と意欲を見せる。