個店の持続化と誇れる市街地形成を 新イベントでにぎわい創出に注力 まちなか会

 陸前高田市高田町の中心市街地に出店する事業者らでつくる「高田まちなか会」(小笠原修会長、64会員事業者)は本年度、市街地エリアの魅力向上に向け、新たなイベントを企画するなど、自主事業の強化に踏み出した。東日本大震災後、再建した個店の持続的経営と市内外に誇れるまち形成を目指し、事業者たちがスクラムを組んで奮闘している。

 

市街地の街灯につるすバナーを定期的に差し替える活動も展開

10~20年先描いた指針策定

 

 高田まちなか会は昨年6月、今後10~20年の中心市街地におけるまちづくりの方向性を示す「高田まちなかビジョン2024」を策定した。
 同ビジョンは、まちなか会内のビジョン委員会(磐井正篤委員長)が中心となり策定。対象区域、目標・方針、具体の取り組み、将来像、ロードマップなどを盛り込む。
 目標像は「高田らしさを生かした何度も訪れたくなるまち~個店の持続的経営と誇れるまちなかの実現に向けて~」。方針は▽魅力的な個店が集うまち▽いつもなにかやっているまち▽つい歩きたくなるまち▽やさしいおもてなしのまち▽地元を生かすまち▽風通しのよいまち──の六つを掲げる。
 具体的な取り組み例は、まちなか会の5委員会や理事会などが手掛けている活動、イベントを6方針別に振り分け、一覧表にした。ロードマップによると、毎年取り組みの成果を確認し、令和10年度にそれまでの検証を行う。
 一連の構想を網羅するように描き込んだ令和12(2030)年時点の地図「高田まちなか妄想マップ」も作成。会員や一般向けに配布している。
 震災を経て商業施設や図書館、子ども広場、博物館などがコンパクトに整備された新市街地。昼時に行列ができる人気飲食店が複数あり、休日の日中は比較的にぎわいをみせるものの、平日の人出はまばらだ。復興事業の長期化などで空き地が目立ち、不足業種も少なくない。まちなかを目的地化する仕掛けが求められていた。
 こうした課題感とコロナ禍、物価高の長期化を踏まえ、まちなか会は平成30年のまちびらきと同会発足から5年が経過した令和5年、ビジョン委を新設。同年9月から昨年1月にかけて岩手、宮城両県の三陸沿岸の都市や、大分県の豊後高田市、由布市、竹田市への視察を3回に分けて行った。他の都市の現状や取り組み、課題を踏まえたうえで、会員間で「陸前高田らしいまち」としていくための意見を出し合い、ビジョンをまとめた。
 昨年9月には、個店の来店者やまちなかで行われたイベント来場者らを対象に各店舗やまちなかにどのようなサービスを求めているかニーズを探るアンケート調査を実施。約400人から回答を得た。今後集計し、結果を各店の事業やまちなか会の活動に生かす。
 小笠原会長(63)は「ビジョンを指針に据えて震災から立ち上がって再生されたまちを誇れるものにしていく」と力を込める。

「まちに磨きをかけていきたい」と意気込む磐井委員長

ビジョン委員長に聞く 「高田らしさ生かしていく」

 

 高田まちなか会の前会長で、令和5年にまちなか会内に加わったビジョン委員会の磐井正篤委員長(68)に、設立の経緯や今後の展開などを聞いた。

 

 ──ビジョン委員会設置の経緯は。
 磐井 震災後、被災した事業者はすべてを失い、先行きが分からない中で、事業や店舗の再建、まちの再生に向けて、がむしゃらに突っ走ってきた。にぎわいの核としてアバッセたかたができ、その周りに一つ一つ店ができた。
 不足業種がたくさんあるなど課題を抱え、発展の途上にあるが、ハードは一定程度整った。一方で市外に目をやる機会がなく、「自分たちは井の中の蛙ではないか」という懸念もずっとあった。
 まちなか会が発足して5年がたち、ここで一度立ち止まり、周りを見渡す時期に来たのかなと思った。コロナ禍、物価高騰と非常に苦しい影響も受けている。魅力の底上げが求められると考え、そのためにもまずは漠然としたもので構わないからビジョンが必要だろうという考えに至った。
 ──県内外の視察も行った。
 磐井 行き先を検討し、震災で被災した三陸沿岸の都市や人口規模が同程度の九州の地方都市を訪問した。いずれの視察もたくさんの会員が参加し、受け入れ先の方々にも驚かれるほどだった。
 視察は意義深かった。その成果は何かと言えば「自分たちのまちは、案外悪くない」と再認識できたことだ。「高田らしさを生かしたまち」にしていきたいと思いを新たにするきっかけとなった。
 ──どのような取り組みを展開していくのか。
 磐井 ビジョンをバイブルに、整備されたまちなかに誇りを持てるよう磨きをかけていきたい。昨年はまちなか会として初めてお客さまへのニーズ調査も実施し、今後の各店の商売に生かしていく。
 ビジョンは、行政が策定する計画などとは性格が異なる。さまざまな取り組みを進め、ビジョンの中身も随時バージョンアップしていきたい。