地域防災向上へ 気概示す 気仙3市町で消防出初め式(別写真あり)

▲ 盛町商店街では勇壮で威勢のいい纏振りを披露=大船渡市

 気仙3市町の令和7年消防出初め式は5日、各市町で開かれた。3市町そろっての開催は平成31年以来となり、令和に入ってからは初めて。各市町では消防団員や消防署員らによる行進、式典などが繰り広げられ、参加者らは地域防災のさらなる向上を目指して気持ちを一つにし、その気概を示した。(齊藤拓、阿部仁志、三浦佳恵)

 

無火災と安全へ士気を高める/大船渡

 

 大船渡市の消防出初め式は、盛町商店街とリアスホールで開かれた。団結した勇壮な姿を市民に披露し、今年一年の無火災と地域住民の安全を目指し士気を高めた。
 市消防団(大田昌広団長)、大船渡地区消防組合消防本部、大船渡消防署から約470人が出動した。
 盛町商店街での分列行進では、はじめに纏組(千葉一道組長)組員らが、威勢のいいかけ声を上げながら纏振りを披露。沿道では、かつて行っていた住民らへの紅白餅の配布も復活し、ともに新年を祝った。
 続いて、ラッパ隊(髙木隆幸隊長)の吹奏に乗せて団員が行進し、消防車両もお披露目された。意気盛んで規律ある様子に、沿道に集まった住民らも、見知った団員に手を振るなどしてこたえていた。
 その後は、リアスホールで式典を開催。消防殉職者と東日本大震災犠牲者に黙とうをささげたあと、統監の渕上清市長が「威風堂々とした分列行進に、力強さと消防の使命へのゆるぎない信念を感じ、感謝が一層深まった。昨年は火災件数が一昨年を大きく下回った。団員の地道な予防啓発が実を結んだもので、ともに引き続き安心して暮らせる社会を目指したい」とあいさつした。
 次に大田団長が「昨年5月の三陸町での林野火災では、水利に乏しい中でも送水を成功させ、消防団の団結力と使命感の強さを改めて感じた。災害対応力の強化を目指し、地域防災の中核として、地域とのつながりを深める決意でいる」と年頭の訓示を行った。
 このあと、無火災分団や、貢献のあった纏組員とラッパ隊員を表彰。纏振りと副統監の引屋敷努副市長の音頭に合わせて三本締めを行い、火防と市民の安全を祈願した。

 

震災後初の一斉放水も/陸前高田

 

15年ぶりとなる一斉放水に臨む団員ら=陸前高田市

 陸前高田市の消防出初め式は、高田町内で行われた。東日本大震災後初となる一斉放水をはじめ、市内行進、式典を実施。地域の安全・安心を守る市内全8町の消防職員33人、団員315人が集結し、勇姿を示した。
 この日は、午前7時30分にサイレンを鳴らしたあと、川原川右岸でポンプ車8台による一斉放水を実施。平成22年以来となり、付近から見守った消防関係者や地域住民らが、冬の空に向かって力強く上がる水柱に感嘆の声を上げた。
 その後は、中心市街地のアバッセたかた周辺で市内行進を展開。市消防団(大坂司団長)の団員や消防車両約40台が隊列を組み、昨年から隊員を増やし新体制で活動するラッパ隊の吹奏に合わせ、堂々と前進した。
 奇跡の一本松ホールでは、式典に先立って大坂団長が訓示。昨年発生した自然災害や団員らの活躍を振り返りつつ、「東日本大震災から得た経験、教訓を踏まえ、いつどこで発生してもおかしくない自然災害への対応の必要性を改めて感じている」と述べた。
 続けて行われた式典では、統監の佐々木拓市長が「消防団員と消防車両による整然とした隊列と威風堂々とした市内行進は、市民の皆さまの消防に対する信頼感を一層高めるものだった」と式辞。
 菅野泰浩消防長は「社会情勢の変化に応じながら、いかなる災害においても迅速かつ的確に対応ができる消防防災体制の構築に努める」と告示した。
 無火災表彰では、5期間達成の気仙、4期間達成の横田、1期間達成の高田、米崎各分団に功績賞を授与。大坂団長は、昨年の県消防操法競技会ポンプ車の部に出場した矢作分団の5位入賞をたたえた。
 来賓祝辞では、及川修一市議会議長、佐々木茂光県議らが一年の無火災、無災害を願った。

 

厳しい寒さに負けず堂々と/住田

 

世田米商店街をりりしく行進する消防団員ら=住田町

 住田町の消防出初め式は、世田米地内で行われた。町消防団員101人、婦人消防協力隊員55人、大船渡地区消防組合住田分署員12人が臨み、世田米商店街での分列行進や町農林会館での式典を展開。防災の先頭に立つ者として、厳しい寒さに負けず堂々とした姿勢を見せ、一年の無火災と地域の安全に誓いを込めた。
 この日は町消防団(菊池実行団長)主催の無火災祈願に続き、県立大船渡病院附属住田地域診療センターから分列行進をスタート。地域住民らが見守る中、参加者らは消防車両など19台とともに、沿道に残る雪を踏みしめながら商店街を力強く進んだ。
 式典に移り、統監の神田謙一町長は年頭あいさつで、「地域防災の強化を目指す中、団員、職員、婦人消防協力隊への期待は大変大きい。地域における消防・防災のリーダーとして、町民の力、地域の力を結集してほしい」と述べた。
 同組合消防本部の小野田利文消防次長は「消防を取り巻く環境が変化している中、住民の負託に応えられることが消防の重要な責務。団員や協力隊とさらなる連携を図り、住民が安心して暮らせる町の実現に向けて取り組んでいく」と諭告。菊池団長は「団員一丸となって、この一年を乗り切っていきたい。平穏な暮らしを、われわれ消防団が担っている。これからも住田をよろしくお願いしたい」と訓示した。
 表彰も行われ、無火災を8年間達成した第3、4年間の第1、3年間の第2、2年間の第4、1年間の第5の各分団に表彰状や竿頭綬などを授与。婦人消防協力隊無火災地区隊として、8年間の大股、3年間の世田米、2年間の下有住、1年間の五葉の各隊も表彰を受けた。
 佐々木春一町議会議長、大船渡警察署の高橋紀彦署長の祝辞などに続き、最後は全員で「火の用心」を三唱。無火災に向けて気持ちを新たにした。