CF型ふるさと納税の資金調達が好調 目標2倍近くの3095万円 給付型奨学金事業に活用 市が今月末まで寄付受け付け
令和7年1月8日付 7面

陸前高田市が給付型奨学金事業の資金を調達するため、昨年8月に始めたクラウドファンディング(CF)型のふるさと納税寄付額が7日正午時点で、目標額の2倍近い3095万円となった。市が本年度から本格運用している同奨学金制度は、自治体としては珍しい「返済不要」が特色。CF上でも向学心にあふれる学生の将来の選択肢を広げるという制度の趣旨に賛同し、寄付が集まっているとみられる。受け付けは今月末までで、市は引き続き協力を呼びかけている。(高橋 信)
寄付は、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営する㈱トラストバンク(本社・東京都)が展開する仕組み「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」上で募集を開始。目標額を1600万円に設定している。
GCFは、自治体が地域課題解決のためのプロジェクトを具体的に明示し、共感した人から資金を調達する仕組み。通常のふるさと納税と同様、寄付額に応じて返礼品を受け取ることができる。返礼品不要で、寄付した全額をプロジェクト運営費に役立てることも可能となっている。
市ふるさと納税の運営事業者によると、GCFへの寄付件数・金額は、8月から10月まで月100件台、200~300万円台で推移。通常のふるさと納税は年末に駆け込み需要が高まる傾向にあり、GCFでもこの追い風を受け、11月は447件、約760万円と大幅増となった。12月はさらに伸ばし、811件、約1500万円と8~11月の合計とほぼ同額をひと月で受け付けた。
7日正午時点で寄付額は累計3095万3000円で、目標達成率は193・4%。返礼品なしの寄付は、全体の1割程度の約300万円に上るといい、担当者は「奨学金の趣旨に賛同し、純粋に寄付をしていただく人も一定数いる。返礼品を大々的にPRする通常のふるさと納税と異なり、寄付の使い道を前面に押し出している効果といえる」としている。
同奨学金制度は、佐々木拓市長が一昨年2月の選挙公約で打ち出し、令和5年度に創設。本年度から本格運用している。
対象は、経済的な理由で修学が困難な市出身の大学生や専門学校生ら。20万円の入学一時金と、月額3万円の奨学金を年3回に分けて12万円ずつ(4カ月分)給付する。
給付期間は、正規の就学期間(短大は2年、大学は4年、または6年など)とする。4年制大学の学生であれば、4年間の受給額は計164万円となる。
給付初年度の6年度分は20人(応募者65人)に支給しており、費用はすべて一般財源を充当。7年度分以降は、一般財源に加え、通常のふるさと納税、GCFによる寄付を充てることとしている。
さらに、市は今夏亡くなった東京都在住の男性の遺族から「給付型奨学金に役立ててほしい」として多額の寄付の申し出があったことを受け、寄付金を管理するための「陸前高田ゆめみらい大場達史記念奨学基金」を創設。遺族からは昨年12月に約1億2000万円が寄付され、今後、同奨学金の資金に充てる。
7年度分の募集は昨年11~12月に実施し、現時点で20人程度の給付を想定。GCFの募集が好調であり、同基金の運用に乗り出すことから、市は同年度分の給付人数の追加を視野に検討していく。
佐々木市長は「クラウドファンディングが目標額を達成したことは、非常にありがたいこと。温かな善意を生かし、制度ができる限り長く運用できるように努め、市出身の若い世代が将来に夢を持てるよう後押しをしていく」と感謝する。