畜養ウニ 継続的な流通へ 綾里漁協が市魚市場に初出荷 初日は殻付き20㌔、販路の検討も(別写真あり)
令和7年1月8日付 1面

大船渡市三陸町の綾里漁業協同組合(和田豊太郎組合長)は7日、綾里漁港内で管理を続けてきた畜養ウニ20㌔(殻付き)を市魚市場に初出荷した。令和2年度から県の委託事業として取り組み、本年度は漁協独自の活動として本格的に実施。ウニが海の海藻を食べ尽くす・磯焼け・の状況改善に加え、旬の夏場以外の季節にも市場流通が見込めるなどのメリットもあり、同漁協では市場におけるニーズの把握や流通の販路を模索しながら、今後の継続的な出荷を見据える。(菅野弘大)

畜養池からすくったウニを計量する漁協組合員(6日)
近年叫ばれる海水温の上昇やウニの大量発生により、本県沿岸ではウニがコンブ、ワカメを食べ尽くしてしまう磯焼けが進行。餌不足によって実入りが悪くなり、商品価値の低い「痩せウニ」が増えているほか、海藻を餌とする魚種にも影響が出ている。
こうした状況を踏まえ、同漁協では2年度から県の「黄金のウニ収益力向上推進事業」の委託を受け、新たな出荷モデルの構築や海中の生息密度の適正化につなげようと畜養に着手。海中から間引きしたウニを綾里湾内から同漁港の畜養池(約500平方㍍、深さ約3㍍)に移植後、餌を与えて成育状況を調査し、実入りアップに成功。ウニのシーズンではない1月や9月の出荷を実現させた。
委託期間終了後も、漁協独自に取り組みを継続。5年度中に漁業権を取得し、本年度は県の「持続的なウニ畜養実施支援事業」や市の新規養殖試験補助金などを活用しながら、昨年9月末時点で1・32㌧のウニを畜養池に投入した。
週2回、干しコンブや塩蔵ボイルまたは生のワカメを餌として与え、毎月実入り率(生殖腺指数)を調査。当初は平均5%だったが、徐々に数値が上がり、12月中旬の調査では10%を超えた。ウニの養殖を行う本県沿岸の他地域の事例も参考にしながら出荷時期を見定め、市場、業者のニーズや値動きを知る狙いも含めて、市魚市場に出荷することとした。殻付きウニが同市場に出されるのは東日本大震災後初めてで、畜養に限っては前例がないという。
今月6日に漁協組合員2人が畜養池からたも網でウニをすくい、5㌔×4ケースの計20㌔を計量。7日は、早朝に水揚げしたウニを県、市職員らの立ち会いのもとで同市場に持ち込んだ。場内では、買い受け人らが殻を割ったサンプルを見ながら実入りや品質を確認。殻付きウニとあって、殻むきの工程などを考慮して買う動きは慎重だったが、取引の結果、市内の鮮魚出荷業者が買った。
畜養を担当する同漁協の山岸中購買課長(50)は「われわれが育てたウニがどのような評価を受けるかを把握する意味も込めての初出荷となったが、市場職員や買い受け人の意見も聞くことができ、非常にためになった。いずれはブランド化まで持っていければと思うが、今後の販路を検討しながら、ニーズに応えられるよう畜養を継続していきたい」と力を込める。
同漁協では、今月中に残りの畜養ウニも出荷したい考え。