伝承活動に電動カート 津波復興祈念公園内で3月まで実証実験 市と観光物産協会 7年度の本格運行計画(別写真あり)
令和7年1月11日付 1面

陸前高田市と市観光物産協会(熊谷正文会長)は、高田松原津波復興祈念公園内における東日本大震災伝承活動に生かそうと、電動カートを活用したガイド事業の実証実験に取り組んでいる。震災津波伝承館のほか、五つの震災遺構などを有する同園は、敷地が東京ドーム約28個分の約130㌶と広大で、移動手段確保が課題だ。市と協会は3月末まで週末を中心に電動カートを運行し、来年度の本格導入を計画している。11日で震災から13年10カ月。時間の経過に伴い記憶の風化が進行する中、気仙を襲った災禍の教訓を後世に伝えるべく、有効な伝承活動の確立を模索している。(高橋 信)
きょう震災13年10カ月
実証実験は、時速19㌔以下で公道を走ることができる電動車(グリーンスローモビリティ)1台を使い、昨年11月から実施。7人乗り(乗客定員5人)で、同協会が養成した祈念公園パークガイド1人が同乗する。
実証実験中の運賃は無料。ガイド付きは原則週末のみで、便数は1日5便、運行時間は1便当たり50分。道の駅高田松原を出発し、園内西側にある震災遺構の旧気仙中校舎と奇跡の一本松に立ち寄り、道の駅に戻る。
一関市の加藤誠喜さん(75)は8日、祈念公園を訪れ、家族や友人との計4人でガイド付き便に乗車。ゆっくりと走る車内で津波被害やハード整備を終えた現況などの説明を受け、一本松そばで降車し、空高く伸びる復興のシンボルを見上げた。
加藤さんは「祈念公園には入ってすぐある道の駅などを訪ねたことがあるが、一本松は遠くから眺めるだけだった。いつか近くで見たいと思っており、カートがあると快適でありがたい。何よりガイド付きだと、知らなかった震災のことをたくさん学べていい」と満足げだった。
市観光物産協会は令和3年度から、内部の見学が可能な旧気仙中とタピック45など祈念公園内を案内するパークガイド事業を実施。受け入れ実績は最多で年間約1万人に上るが、事前予約制の団体客(20人以上)が大半を占める。
電動カートを導入すれば、当日受け付け可能な数人単位の個人客向けガイドも展開できることとなり、協会は「活動の幅が広がる」としている。市は4、5年度、園内の新たな移動手段として自動運転バスを走らせる実証実験に取り組んだが、有人運転と比べてかさむコストの抑制などが課題となり、導入を見送った。
市や協会は電動カートの実証実験後、導入の効果や課題を検証し、5月の大型連休に合わせたガイド付き便の本格運行を目指す。実装後は有料となり、今後ガイド料などを決める。
実験中の利用は事前予約不要で、道の駅前に週末設けている受付所で申し込めば乗車できる。平日は基本的に水、金曜日にガイドなしを走らせている。
同協会の小林大樹事務局長補佐は「足が不自由な方や子どもでも気軽に乗られ、震災についてより知ることができ、ニーズはあると思う。『アトラクション性があって楽しい』という声もいただいている。電動カートを活用しながら個人客向けの伝承活動を進めていきたい」と話す。
カート出発時刻は次の通り。
▽道の駅高田松原発=午前10時、午前11時、午後1時、午後2時、午後3時