〝としる料理〟広がり期待 大船渡商議所のアワビ活性化事業 飲食店関係者向けに講習会(別写真あり)
令和7年1月15日付 7面
大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)による岩手県飲食業生活衛生同業組合大船渡支部(千葉武継支部長)の関係者らを対象としたアワビ料理講習会が14日、盛町の市働く婦人の家で開かれた。参加者はアワビの肝(としる)を生かした伝統の浜料理や、高校生が考案したメニューを学び、地元食材活用への意識を高めた。(佐藤 壮)
この取り組みは、復興庁の支援制度「新ハンズオン支援事業」を生かした「蝦夷あわびを活用した地域活性化事業」の一環。専門家とともに被災地域企業の経営課題を解決する取り組みで、商議所はグループ支援として選定を受けた。
古くから沿岸で盛んに漁が行われ、加工された干鮑などが海外では高いブランド力を誇る大船渡産のアワビに着目。蓄養・養殖といった民間技術も含めて地域資源としてとらえ、歴史的・文化的な調査や料理開発、地元高校生との連携を通じて「鮑=大船渡」のブランド確立や料理の特産品化、観光客の認知度向上などを目指している。
昨年12月のおおふなと産直海鮮まつりでは、大船渡東高校食物文化科3年の「食のChallengeコース」に所属する生徒が、伝統料理の「としるの貝がら焼き」と自ら考案した「としる醤油の焼きおにぎり」を提供。好評を博したことから、飲食店関係者らにも試食してもらい、今後の普及拡大につなげとうと企画した。
市内の飲食店関係者ら約10人が参加。としるの貝がら焼きは、生徒にも指導した三陸町越喜来の樋口圭子さん(72)が解説した。
この日は冷凍加工したアワビの肝を使用。みそを塗ったアワビの貝殻に、千切りにしたダイコンと、砂袋などを取り除いてぶつ切りにした肝を置き、味付け後にオーブンで火を入れた。ひと煮立ちしたタイミングで肝から外した白い部分やバターも添え、再び焼き上げた。
参加者も調理を手伝いながら流れを確認。オーブンに入れる状態まで下準備をしたあとに冷凍保管し、営業時には素早く提供するなど、飲食店メニューとして出す具体的なアイデアも話題となった。
「としる醤油の焼きおにぎり」は、三陸町綾里の野村海産㈱が製造する、肝を使ったしょうゆ製品の「あわびの精」を使用。大葉などを混ぜたおにぎりの表面などに塗り、トースターで焼き上げた。
説明役を務めた千葉支部長(54)は「飲食店でも出しやすいように」と語りかけ、お茶漬け風のメニューも提案。焼きおにぎりに加え、同越喜来の㈲田村蓄養場三陸営業所が提供した「干鮑の削り節」を茶わんに入れ、だし汁を注ぐと、香ばしさが広がった。
いずれも短時間で調理でき、試食では「思ったよりも簡単」といった声が寄せられた。千葉支部長は「アワビをはじめ地元の食材がもっと使われるようになることで、地域全体にいい流れが生まれてほしい」と期待を込めた。
本年度、商議所では同事業を生かし、アワビ料理を味わえる店舗紹介に加え、アワビ産業の歴史や地元事業所のこだわりなどをまとめた報告書作成などの取り組みも展開。来月には事業報告会も計画している。