伝統の奇習 間近で体感 迫力満点「吉浜のスネカ」 小正月に合わせ 地区外親子に初の試みも(動画、別写真あり)

▲ 出発式を終えて子どもたちに迫るスネカ

 大船渡市三陸町吉浜地区に伝わる小正月の奇習「吉浜のスネカ」は15日、同地区で行われた。より多くの人々に伝統行事に触れてもらおうと、保存会(岡﨑久弥会長)は初の試みとして、同地区拠点センターでの出発式に合わせて地区外の親子を招き、伝統の「問答」を披露。関係者は地域の大切な宝を後世につなぎ、安寧や繁栄につなげる思いを新たにした。(佐藤 壮、齊藤 拓)

 

今年は10体が吉浜地区を回った

 スネカは子どもや怠け者をいさめる一方、里に春を告げ、五穀豊穣や豊漁をもたらす精霊とされる。平成30年には「来訪神:仮面・仮装の神々」として、スネカを含む全国8県10件の来訪神行事が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。
 知名度が高まっている半面、吉浜のみをいさめ歩くしきたりとなっており、地区外の子どもたちは、親戚宅がないと体感が難しい。伝統をより多くの人々に触れてもらおうと、初の試みとして出発式を見学する親子の参加を受け付けた。
 昨年12月にかけて募集したところ、地区外在住の市内親子4組が参加。出発式後にスネカが奇怪で恐ろしい形相で近づくと、子どもたちが泣きわめく声が響いた。スネカの「かばねやみはいねぇが」といった語りに対し、子どもたちは涙を浮かべながら「いい子にします」と約束を交わした。
 参加した大船渡北小の渡辺璃叶さん(2年)は「最初にスネカが来た時、びっくりした。泣くのを我慢できなかった」と、妹で大船渡保育園の渡辺千惺ちゃん(4)は「怖かったけど約束できた」話した。
 連れ添った父親の勇飛さん(30)=大船渡町=は「少しでもいい子になってほしい思いと、妻や私も見たかったので参加した。事前に募集してくれるとありがたい」と語り、笑顔を見せていた。
 今年は保存会関係者や吉浜在住の中学生ら計10人が、流木を生かした面、わらみの、俵などを身につけ、アワビの殻を腰にぶら下げた。約300世帯を回り、伝統をつないだ。
 初めてスネカとして地域を回った大船渡一中の浅沼凜花さん(3年)は「昨年まで付き人として地域を回り、私も頑張ろうという思いなった。スネカは怖いけど、来ないと一年が始まらないし、福を呼んできてくれる。高校生になってもできれば続けたい」と語り、今後の継続参加にも意欲を見せた。
 岡﨑会長(50)は「吉浜も少子化で子どもがいる家庭が少なくなった。一方で、ユネスコ登録を受け、見に来たい人もいると思う。できるだけ多くの人に見に来てもらえる環境を整えていきながら伝承したい」と今後を見据える。