土地区画整理事業区域 昨年11月時点の土地利用率55・6% 空き地解消へ一歩ずつ 官民で取り組み展開 アンケート調査や新イベント
令和7年1月17日付 1面

陸前高田市は東日本大震災後、復興土地区画整理事業を展開した高田、今泉両地区の土地利活用促進に取り組んでいる。事業対象地(106・6㌶)の土地利用率(利用予定を含む)は、昨年11月末時点で55・6%(59・3㌶)。年々微増し、5割を突破したものの、かさ上げ地などには依然として空き地が目立つ。市やまちづくり会社は本年度、地方進出を検討している企業に対して戦略的にPRする足がかりとすべく、県外企業へのアンケート調査などを実施。地元事業者らは魅力向上に向けた新イベント実施などに乗り出した。復興事業で築いた土地の利活用促進へ、引き続き官民の地道な取り組みが求められる。(高橋 信)
津波で被災したまちの土台を整えるため、市が導入した土地区画整理事業。浸水地を大規模にかさ上げしたり、高台の山を切り崩したりする工事の面積は高田地区186・1㌶、今泉地区112・4㌶の計298・5㌶におよび、東北被災地の中で最大規模となった。
このうち、道路や公園、緑地などを除いた市有地、民有地は106・6㌶。利用している土地(予定ありを含む)は昨年11月末時点で59・3㌶で、内訳はかさ上げ部34・5㌶、平地部24・8㌶となっている。
利用率は令和元年11月末時点で45・1%。それ以降、年間0・9~5・5㌽伸ばし、昨年11月末時点で55・6%。ただ民有地に限れば利用率は34・6%にとどまり、土地所有者が遠方に住んでいるなどの理由で管理が行き届かず、雑草が繁茂している空き地も散見される。
市は平成31年1月から、土地所有者と利用希望者を結ぶ「土地利活用促進バンク」を運用。登録数は昨年11月末時点で555件で、うち成約数は75件だった。
また手厚い補助金制度も創設。令和元年、バンクに登録された土地の購入者向けに、固定資産税相当額分として5年間で最大100万円分の地域共通商品券を交付する制度を設け、5年には土地売却者、仲介した宅建業者への支援金制度も打ち出した。
さらに、市は本年度、事業者へのPRを強化しようと、企業のホームページ問い合わせフォームに市の紹介文やウェブアンケートを送信する新たな試みを実施。昨年5月、関東圏の企業約3000社に送り、反応のあった企業と連絡を取り合ったほか、視察に応じた。
まちづくり会社の陸前高田ほんまる㈱(磐井正篤代表取締役)も市と連携し、昨年11~12月、東北や関東圏の企業約3000社に対し、同様の方法でアンケート調査を実施した。
また、中心市街地の出店事業者らでつくる高田まちなか会(小笠原修会長)や同社は、区画整理事業で整備されたまちなかの魅力向上に励んでいる。
まちなか会は昨年6月、今後10~20年の市街地におけるまちづくりの方向性を示す「高田まちなかビジョン2024」を策定。同ビジョンに基づき、7年度から4~10月(7、8月を除く)の毎週土曜日に路上市「ほんまる茜市」(同実行委主催)が開催されることとなり、にぎわい創出を図っていく。
まちなか会の役員でもある磐井代表取締役は「利用率は一歩ずつ上げていかなければならないが、数字のみで復興の度合いを捉えるのではなく、もう少し丁寧に見つめるべきだと思う。陸前高田ならではの強みもあり、正確な情報を分かりやすく発信していくことが大切だ」と見据える。
市土地活用推進課の髙橋宏紀課長は「未利用地は依然としてあるが、少しずつでも利用率が伸びていることは前向きに受け止めている。地元事業者なども土地の魅力向上へビジョンを打ち出すなどしており、引き続き連携していきたい。地道ではあるが、停滞せずにPRしていきたい」と力を込める。
土地利用率の推移は別掲。