インタビュー気仙2025ー①大船渡商工会議所会頭・米谷春夫さん(77) 変化に対応して活路を
令和7年1月21日付 1面

今年のえとは、新たな成長や進化の象徴とされる「巳」。人口減少を筆頭として、長引く物価高騰、主力魚種の不漁、多様化する災害への備えなど、気仙も多くの課題に直面している中で、発展への道筋をどのように描き、何をなしていくべきか。年頭にあたり、各界リーダーらの思いを聞く。
──大船渡、気仙の景況をどうとらえているか。
米谷 大変厳しい状況で、いわば雨降り寸前の〝曇天〟。復興需要が終わり、土木・建築関連の仕事が減少して内陸に仕事を求める業者が増えている。円安による諸物価、原材料の高騰で、住民生活も節約志向に軸足が移っている。消費が鈍っていることもあり、経営は厳しく〝快晴〟の企業はないのではないか。
──物価高騰や相次ぐ倒産・廃業、担い手不足などが叫ばれているが、特に課題と感じていることは。
米谷 ここ数年、経営環境が大きく変化している。変化に対応できない経営者にとっては、非常につらい状況。自信喪失によって「廃業しようか」「身売りしようか」といった動機付けになっていく。いかにして適応していくかに悩まされる経営者が大変多い。
──厳しさの一方で、明るい兆しや動きは。
米谷 「事業は人なり」という意味で、大船渡商工会議所によるビジネスアカデミーの卒塾生が100人近くに達している。半年以上にわたり勉強することは、並大抵のことではない。意欲旺盛な若い人たちが増えていることは、明るい材料の一つではないか。
競争力をつけて〝外貨〟を稼ごうとする事業者も出ている。内需には限界があり、外で稼がなければ企業の発展はない。もともと、大船渡は地元外で稼ぐ主力企業が何社かある。
観光プロモーションをどんどん仕掛けていくためにも、一般社団法人大船渡地域戦略の地域DMO(観光地域づくり法人)登録や、大船渡駅周辺地区で先月、3店舗が相次いでオープンしたのは朗報。市外からの集客につながってほしい。
「日本遺産の市」に向けた取り組みも、活発化している。追加登録が目的ではなく、最終的には観光につなげる展望がある。
──商議所事業として、特に力を入れていきたいことは何か。また、行政に求めていきたいことは。
米谷 一つ目は、にぎやかで活力あるまちづくりを、行政と二人三脚のつもりでやっていく。二つ目は中小企業、特にも小規模事業者に対して懇切丁寧な相談をやっていかなければならない。最後の三つ目は、やはり人づくり。ビジネスアカデミーの継続に加え、各種セミナー開催等も積極的にやっていきたい。
行政には、もっと動いてもらいたい。動かなければ、何も活路は出てこない。ためらったり、考えるばかりではなく、行動を起こすことが大切だ。
人口減少は私たちの力では、どうにもならないところもある。そういう中で公共施設を共有化するといった広域連携がより重要になるのではないか。
──経済界のリーダーとして今年の抱負を。
米谷 スローガンに「『時代の大変革期 果敢な挑戦で未来を拓く』やれることは何でもやる!!」を掲げているが、絵空事だったり枕ことばで終わってはいけない。本当に時代が大きく変わるという認識の下、挑戦していきたい。
今年行われる防潮堤での「不思議アート」や「囲碁のまち」として壁碁を描きたいという動きを肯定的に受け止め、支援をしていきたい。大船渡で7月に2日間開催されるケセンロックフェスティバルも波及効果は大きく、大いに期待している。未来への答えはなかなか見つからないが、「いいね」と思ったことをやる中で、活路が生まれるのではないか。
事業経営者にとっては、環境変化にどう対応するかが、一番必要とされている。適応するために、自分がだめならば後継者に委ねるとか、あるいは、外部を頼りにするとか、いろいろな方策があると思う。
経営者が情熱を持ち、自助努力を続けていくことが大切。事業継続が最優先で、その中で柔軟に対応していかなければいけない。
(聞き手・佐藤 壮)