歌人・柳原白蓮直筆の掛け軸 住田・ふるさと創生大学に寄贈 所有者の佐々木さん(上有住)
令和7年1月23日付 7面

住田町上有住の五葉地区を拠点に活動する一般社団法人文化政策・まちづくり学校(ふるさと創生大学、千葉修悦理事長)に18日、大正から昭和時代にかけて活躍した歌人・柳原白蓮直筆の掛け軸が寄贈された。白蓮と親交のあった同町の故・佐々木慶郎さんの長男・慶逸さん(69)が所有していたもので、住田と白蓮のつながりを示す財産として後世につないでいく。(清水辰彦)
「情熱の歌人」として知られる白蓮は、華族の次女として明治18年に東京で生まれた。10代で最初の結婚をし、離婚後に女学校に編入。卒業後は九州の炭鉱王と再婚し、歌集などを出版。大正10年に年下の恋人と駆け落ちし、新聞紙上に白蓮の絶縁状が公表されると、「白蓮事件」として世間の注目を集めた。昭和42年に81歳で亡くなるまで歌壇で活躍した。
白蓮は、上有住出身の歌人・佐藤霊峰(本名・兼夫)の師。霊峰は大正7年に生まれ、昭和16年に上京し、白蓮に弟子入りした。自選詩歌句集『この道』などを発表し、36歳で白蓮主宰の同人誌「ことたま」で編集長を務めるなど活躍が期待されたが、胃がんのため38歳で他界した。
その後、郷里の友人や親戚たちが上有住に霊峰の歌碑を建立。碑文を揮ごうするなど白蓮も協力し、昭和33年に行われた除幕式にも出席した。この際、霊峰と旧知の仲であった慶郎さんが白蓮一行を送迎するなど手厚くもてなし、そのお礼として掛け軸が贈られたという。
ふるさと創生大学は、地域の歴史文化に光を当て、町内外で講習機会を創出。地元出身の霊峰についても広く学んでいる。今回、慶逸さんは「白蓮先生や霊峰さんのことを多くの人に知ってほしい」という思いから掛け軸を寄贈した。
──「あひがたき 天と大地と和田津海と 極みのはてに 相倚るを見る」。
掛け軸の言葉には「天(霊峰)と大地(慶郎)と海(白蓮)はいつかまた会うだろう」との意味が込められているといい、千葉理事長は「大切に保管し、白蓮先生と霊峰さんのことを後世に伝えていきたい」と感謝している。