しけ影響で数量4割減 気仙沿岸の今季アワビ水揚げ実績 禁輸措置長期化で金額は半減

▲ 県全体の数量は過去最低に終わった今季のアワビ漁

 県漁業協同組合連合会は、本県の今季アワビ実績をまとめた。気仙沿岸の漁獲実績(1号品)は、令和6年度第1期(昨年11月)と第2期(同12月)を合わせ、前年度比43・5%減の8・42㌧。金額は同54・8%減の4850万円で、いずれも大幅な減少となった。東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出に伴う中国の禁輸措置の長期化が価格低迷に拍車をかけ、さらにしけで出漁回数が限られたことで数量も伸びないという〝二重苦〟の状況が漁業者らに重くのしかかった。(菅野弘大)

 

 各漁協では各月に1、2回程度の開口日を設定。漁期の11、12月とも漁が行われたのは、大船渡市、越喜来、吉浜、広田湾の各漁協管内で、綾里漁協は資源管理の観点から12月のみとした。
 気仙地区の第1期の水揚げ数量は3・43㌧、第2期は4・99㌧。前年度との比較では、累計で6・49㌧の減少となった。金額は第1期が2056万円、2期が2794万円で計4850万円。1億736万円だった前年度から半減した。
 県産アワビは、大半が中国で高級食材として扱われる干鮑に加工され、香港へと輸出されるが、福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国政府は令和5年8月以降、日本産水産物の輸入を停止。長引く禁輸措置によって荷動きが止まり、入札価格は大きく値下がりした。昨年10月の第1期アワビ事前入札会における10㌔当たりの平均価格は5万8660円で、前年の7万9000円台から26%下落。11月の第2期は5万5855円とさらに下回った。
 こうした状況を受け県漁連では、処理水の海洋放出開始以降、東京電力と賠償を巡る協議を続けており、昨秋に合意。5年8月の処理水放出前の入札価格を基準として、5年度の価格との差額が賠償される見通しとなった。
 県漁連によると、長引く禁輸措置が価格下落を引き起こしている状況に加え、今季はしけで波が高かったり、潮の流れが速く、県全域で出漁回数が減少。11月は上場した60の浜のうち、28の浜で開口できない異例の事態となった。気仙地区でも、開口日の朝に海況が変わり、出漁を見送ったケースが見受けられた。
 こうした影響を受け、県全体の水揚げ量は58・52㌧(前年度比42%減)で過去最低に。金額は3億7709万円(同57・8%減)で、約5億円減少した。
 気仙地区のアワビ水揚げ数量は、平成25年度が77・2㌧(対震災前3カ年平均比12%増)、26年度が48・6㌧(同29%減)、27年度が47・2㌧(同31%減)、28年度が30・4㌧(同56%減)、29年度が18・2㌧(同74%減)と推移。30年度は数量が11・5㌧(前年度比37%減)、令和元年度は8・1㌧(同29%減)で、2年度は7・3㌧(同10%減)と減少した。3年度は14・41㌧、4年度は18・81㌧と徐々に増加していたが、取り巻く環境の変化によって5年度は14・90㌧と下がった。