地域に響く「見っさいな」 世田米で奇習・水しぎ 住民に防火呼びかけ(別写真あり)

▲ 各所で防火を呼びかけた一行。世田米小では子どもたちと一緒に歌う場面も

 住田町世田米地区に伝わる火伏せの奇習「水しぎ」は24日、同地区内で行われた。愛宕地域の青年団「一の会」(菊池芳幸会長)や県立住田高校の生徒ら計約30人が奇抜な格好で家々や公共施設を訪問し、「見っさいな」のかけ声とともに防火を呼びかけ。地域には道化にふんしたメンバーたちのにぎやかな声が響き渡った。(清水辰彦)

 

 水しぎは世田米に約200年前から伝わる奇習。世田米が宿場町として栄えていた当時、偶然ボヤを見つけた通りすがりの物乞いが鍋釜をたたいて住民に知らせ、大火事を防いだのが由来で、「水注ぎ」「水祝儀」がなまったものという。戦後しばらく途絶えた時期があったが、昭和51年に一の会が復活させた。
 この日は、一の会メンバーに加え、住田高校から紺野爽介さん(2年)、菊田玲音さん(1年)、水野慧さん(同)、長谷川創一さん(同)、深野昂樹さん(同)の5人が参加。地域の伝統文化に触れてもらおうと学校側が有志を派遣したもので、高校生の水しぎ参加は初めて。
 愛宕公民館に集まったメンバーは、それぞれが趣向を凝らしたメークや着付けをし、踊りの練習を行って本番に備えた。
 着崩した和服姿で、顔を白塗りや墨汁などで覆った〝奇妙〟な一行は、はじめに住田高校を訪れ、その後は商店街にある岩手銀行世田米支店、地域内の民家、世田米小、住田中、町役場、世田米保育園など合わせて約300カ所を訪問。各所で「見っさいな、見っさいな。御大黒というひとは、一に俵を踏んまえて、二でニッコリ笑って…」などと歌を響かせながら、缶を打ち鳴らしてにぎやかに歩いた。
 住田高校の長谷川さんは陸前高田市出身だが、「興味があって、参加してみたかった。すごく楽しかったので、来年も参加したい」と声を弾ませていた。 
 菊池会長(46)は「今年一年、火事がないように過ごせれば」と無火災を願っていた。