地域の宝 火災から守れ 文化財防火デー 気仙3市町で査察や訓練(別写真あり)
令和7年1月25日付 3面
文化庁と消防庁が毎年1月26日に定めた「文化財防火デー」を前に、気仙3市町では24日、消防関係者が文化財防火運動を展開。各地の寺社仏閣で査察や火災防御訓練を行い、地域の貴重な文化財を守るための体制づくりや啓発に努めた。
文化財防火デーは、昭和24年1月26日に発生した奈良県の法隆寺金堂壁画の焼損を機に、文化財を火災や災害から守るために制定されたもので、全国で防火運動が行われる。
24日には、大船渡消防署(佐藤礼署長)の訓練と査察が、大船渡市と住田町の史跡や名勝など合わせて20施設で行われた。
このうち、大船渡市三陸町越喜来の円満寺では、三陸分署の署員5人が訓練と防火査察を実施した。
署員らは互いに合図を交わしながら、水利近くに停めたポンプ車から本堂までホースを伸ばし、屋根に向けて放水するまでの流れを確認。同寺に集まっていた住民らも通報や避難訓練を行い、万が一の場合に備えた。
また、施設内の査察では分署員らが、収蔵されている文化財、使用している火器などをチェックしたほか、消火器や火災報知設備の更新時期を同寺の関係者と共有。防火に努め、文化財を守る体制を固めた。
同分署の泉田一樹主任は「寺社は木造である特性上、火災時には火が燃え広がりやすく、損失も大きい。ろうそく、線香、ストーブをよく使う場所でもあるので、一般の方も十分に火の用心を」と話した。
同署は25日に3施設で、26日(日)に4施設で同様に訓練や査察を行う。
一方、陸前高田市では、市教委や同市消防本部などが米崎町の海岸山普門寺(熊谷光洋住職)で消火、避難訓練を展開。地域住民約40人が参加し、有事の動き方を確認した。
同寺は1200年代からの歴史があり、過去2回火災を経験。現在、県指定の文化財「普門寺三重塔」や「絹本著色愛染明王画像」「木造伝聖観音菩薩坐像」、同じく天然記念物「普門寺のサルスベリ」を所有し、ほかにも複数の歴史的建造物や資料が残されている。
訓練冒頭、山田市雄教育長は文化財防火デーの趣旨を説明したうえ、「文化財を日ごろから大切にし、後世に残していくことが大事。皆さんと心を一つにして臨みたい」と語った。
その後、本堂から火が出た想定で、集まっていた地域住民らが外に避難。寺の役員らは、消防への通報や文化財の移動など、あらかじめ決められた係ごとに速やかに行動した。
避難後は、消防署員による放水や、消火器を使っての消火訓練も実施され、参加者らが実践を通じてより良い行動を考えた様子だった。
熊谷住職は「寺に残っているものは陸前高田の歴史を残す財産であり、同じものは作れない。火災報知器の点検や消火器の用意、漏電への警戒など火災予防に徹したい」と話していた。