震災乗り越え供用開始 旧県立病院跡地に「おおふなと防災公園」 一時避難や仮設住宅整備も想定
令和7年1月29日付 1面

大船渡市が大船渡町字地ノ森地内の旧県立大船渡病院跡地で整備していた「おおふなと防災公園」が、供用開始を迎えた。東日本大震災前から整備計画があったが、震災直後に市内で最も早く応急仮設住宅団地が建設されたため実行には至らず、仮設住宅撤去後に再び事業化された。憩いの場としての日常利用に加え、一時避難や仮設住宅を迅速に構える候補地にも位置づけ、防災機能を備えたトイレやベンチも設けた。(佐藤 壮)

住民向けの説明では、ベンチを「かまど」として活用する実演も
市は令和3年度から測量設計に着手。5年度は敷地造成工事を進め、6年度にはトイレやあずまや、水飲み場などの建築工事が行われた。公園に隣接する市道2路線計180㍍の道路幅は、6㍍から8・5㍍に広げ、大型車両の乗り入れがしやすくなった。総事業費は1億4539万円で、財源には緊急自然災害防止対策事業債を活用している。
トイレは男子、女子用に加え、オストメイトを備えた多目的トイレも整備。市内の都市公園では初めて、全個室に温水洗浄便座を付けた。
外部電源も2カ所に設置。地域行事などで利用したい場合は、市土地利用課(市役所本庁舎3階)に連絡すれば鍵を開けるという。
トイレの両側には、つり下げ用のフックを備え付けた。災害時にはブルーシートをかけて日よけなどとして利用できる。今後は男子トイレ内の用具庫に、災害時の携帯電話充電などに使えるポータブル電源も防犯対策を行ったうえで設けることにしている。
水飲み場は、車いすでも利用しやすい構造。ベンチ2基のうち1基は、災害時には火をたいて煮炊きできる「かまど」としても活用できる。
約3400平方㍍の芝生広場は憩いの場としており、グラウンド・ゴルフでの利用も想定。災害時には応急仮設住宅60戸程度の整備が可能となる。
アスファルト舗装で約1100平方㍍の駐車場は、43台分に対応。約1000平方㍍の敷砂利スペースは、炊き出しや各種イベントにも利用できる。
昨年12月24日に完成し、供用開始の今月26日には、地域住民向けの説明会が開かれた。約20人が参加し、園内の各機能について説明を受けたほか、ベンチをかまどとして利用する流れも確認した。
公園用地には県立大船渡病院があったが、同病院は平成7年から同町字山馬越地内の現地で診療を開始。その後、旧施設は解体され、18年には北側敷地に葬祭施設が建設された。
残る跡地は市有地となり、昭和35年のチリ地震津波で近隣地域に暮らす住民の多くが犠牲となった教訓を踏まえ、避難場所や防災啓発活動の拠点として活用することを検討。平成22年度に防災公園として設計し、23年度の整備を予定していたが、同年3月11日に東日本大震災が襲った。
上下水道のライフラインが行き届き、土砂災害危険区域外にある立地環境を生かし、発災2週間後の3月25日から応急仮設住宅整備に着手した。72戸分を確保し、市内では最も早い4月20日に完成。高齢者世帯や障害者、要介護者、乳幼児のいる世帯などが優先的に入居し、30年度まで利用が続き、令和元年10月に撤去された。
現在、最大クラスの津波襲来を想定したハザードマップでも、浸水想定域から外れている。今後は、日常的なにぎわい創出のあり方に加え、有事に地域住民だけでなく市外からの来訪者らが迅速に避難できるよう、防災面の環境づくりが進むかも注目される。