オシラサマ107世帯目あった 横田町・佐々木さん宅 市立博物館調査で発見
令和7年2月1日付 7面
陸前高田市内の家々などで保管されている民間信仰の御神体「オシラサマ」について調査している市立博物館(菅野義則館長)が、市内で通算107世帯目となる所有者を新たに発見した。現在、同館で開催しているオシラサマの特別展に伴う調査で明らかになり、関係者は「陸前高田の宝物がまた一つ見つかった」と喜んでいる。
オシラサマを所有していることが新たに分かったのは、横田町堂の沢の佐々木孝広さん(63)宅。1月31日、同館主任学芸員の熊谷賢さん(58)、学芸員の佐々木翔さん(38)が家を訪ね、孝広さんの母・サエ子さん(89)らから聞き取り調査した。
孝広さん宅のオシラサマは男神・女神の2体一組で、高さは30㌢前後。サエ子さんによると、昭和初期から「オッシャサマ(またはオッシャガミサマ)」と呼んで祭り、オシラサマの祭日(縁日)とされる小正月に合わせ、1月16日に像に新たな布を着せる習わしを受け継いできたという。
熊谷さんらは家人の許可を得て2体を博物館に運び、今後、詳細の調査を行う。特別展にも後日、展示することとしている。
サエ子さんは「こんなにも多くの家でオッシャサマを保管しているということさえ知らなかった。博物館の方に調査していただき、ありがたい。オッシャサマもずっといた自宅から外に出られて喜んでいると思う」と感激していた。
東北地方を中心に古くから伝わるオシラサマ。県内では気仙、上閉伊、下閉伊、二戸地方に集中的に分布している。
市立博物館は昭和63年度、平成18年度に、オシラサマの所有世帯を確かめようと調査を実施。結果、106世帯に351体が残っていることが分かり、同館によると、この数は国内最多を誇るという。
しかし、東日本大震災の津波で17世帯の像が流され、現存するのは89世帯(今回の佐々木さん宅を除く)。同館はこうした被災状況や家々の世代交代に伴う信仰形態の変化を把握するべく、昨年から再調査を進めてきた。
熊谷さんは「津波で流失したオシラサマもあり、現存するものは大変貴重だ。確認し尽くしたと想定していた中、107世帯目が見つかり、非常にうれしい。調査に協力していただいた佐々木さんや情報を寄せていただいた地域住民の方々に感謝している。この陸前高田の宝物をぜひ多くの人に見てほしい」と喜ぶ。
特別展は3月30日(日)まで。1日は午後2時から同館で、関連の展示解説会を行う。問い合わせは同館(℡54・4224)へ。