パネル位置一部見直し 吉浜太陽光発電計画「準備書」縦覧開始 環境アセス基づき10、11日に説明会
令和7年2月1日付 1面

大船渡市三陸町吉浜地区の大窪山市有地などで大規模な太陽光発電事業を計画する自然電力㈱(本社・福岡県福岡市、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也代表取締役)は1月31日、県条例に基づき環境アセスメント準備書の縦覧を始めた。太陽光パネルの設置は、枚数を変えずに湿地帯を避ける形で位置を一部見直し、昨年度まとめた方法書に対して寄せられた指摘への対応策もまとめた。同社ホームページや市役所などで公開し、今月10日(月)と11日(火・祝)には市内で住民説明会を開催する。(佐藤 壮)
環境アセスメントは、大規模な開発事業などを行う場合、周辺環境の影響を事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表し、県民や知事・市町村長などの意見を聞きながら環境への影響をできるだけ少なくするための手続き。
計画する「大船渡第一・第二太陽光発電所事業」の事業者は、自然電力の子会社である岩手三陸太陽光発電合同会社。県条例に基づき令和5年度に「方法書」をまとめ、住民説明会や県環境影響評価技術審査会を経て出された知事意見では、環境面への調査に加え、地域住民らと意見交換を行いながら事業への理解を得られるよう求める内容となった。
準備書は、これまで行ってきた環境影響評価の結果を取りまとめたもの。事業は「元山」の約98㌶で計画し、太陽光パネルは約7万6600枚を計画。パネルをはじめ工作物を設置する面積は約27㌶としている。管理用道路設置の位置変更などに伴い、一部区域で拡張・縮小がみられる。
パネルは大窪山牧場跡地に集約。方法書の提出以降に太陽光パネル位置の検討を進め「重要な動植物の生息域や生育地である湿地群落を極力回避した」などとしている。管理用道路は、市道からのアクセスが必要となる場所に限定するよう見直した。
計画地や周辺では準備工や防災工、崩壊がある部分の市道復旧や管理用道路整備の土木工事、資機材運搬用のモノレール工事、杭・架台・パネル設置工事を計画。工事期間は着工から20カ月程度を要するとしている。パネル設置では、原則として、切り土、盛り土造成は行わない。
工事用資材の搬出入に関する車両の主要な走行ルートは、一般国道45号から「行き」は越喜来の市道河内線や市道夏虫山1号線を、「帰り」は吉浜の市道大窪線を使用する。
また、昨年度の方法書縦覧以降に寄せられた住民意見の概要と、事業者側の見解もまとめた。イヌワシの生息や飲料水、希少な動植物保護などへの影響指摘や不安に対する回答が並ぶ。
準備書は自然電力ホームページで確認できるほか、市役所本庁市民環境課と三陸支所、大船渡地区合同庁舎県民ホールなどで縦覧できる。3月14日(金)まで平日の開庁日に対応し、時間は午前8時30分~午後5時15分。
意見書の受け付けも同日まで。各縦覧場所には意見書箱を設置し、郵送(〒103・0023東京都中央区日本橋本町2丁目4番7号遠五ビル自然電力㈱大船渡第一・第二太陽光発電所担当)も応じる。
住民説明会は、10日午後6時30分からリアスホールで開催。11日は同1時30分から旧吉浜中学校体育館で予定している。
今後は方法書と同様に、県環境影響評価技術審査会での審議などを踏まえ、知事意見がまとめられる。案件によっては公聴会も設けられるが、県は「この件が該当するかどうかは決まっていない」とする。
東海新報社の取材に対し、自然電力は「専門家の意見も踏まえ、できる限りの調査を実施し、自然や地域住民の暮らしにどのような影響があるか可視化することができたと考える。縦覧や説明会での意見は計画への反映を検討するほか、調査結果を示し、理解を得たい」とコメントした。
年内の「評価書」提出を予定し、その後の動きは市と協議して固める考えも示す。一般的には、評価書の公告・縦覧を経て、工事着手となる。
方法書に対する知事意見でも言及していた住民らとの意見交換に関して、同社では「調査と並行し、地域の方々と意見交換できる場を複数回設けてきた。また、吉浜海岸でビーチクリーン活動をともに実施するなど、地域の方々との対話も重ねた。準備書(調査結果)の説明会にとどまることなく、対話の場を設けたい」としている。
計画区域の土地所有者は市で、事業者と締結した停止条件付きの土地賃貸借契約に基づき進められる。当局は賃貸可否の判断について昨年12月の市議会答弁で「これまでの経緯を十分に踏まえ、事業者や県が行う市民らとの意見聴取を注視する」と方針を示している。