「第4種踏切」の事故なくせ 大船渡市でプロジェクト始動 岩手開発鉄道路線で実証へ

▲ 警報器や遮断機がない第4種踏切。事故防止へ向けて大船渡市で各種取り組みが進められている=日頃市町

 列車の接近を知らせる警報器や自動遮断機が設置されていない「第4種踏切」における事故を防ごうと、大船渡市で一つのプロジェクトが立ち上がった。踏切横断者に列車接近を告知する支援装置の設置に加え、地元の子どもたちによる地域の危険箇所を知るフィールドワークを活動の2本柱に据え、住民が安心、安全に生活できる社会づくりにつなげようとの取り組み。今後は岩手開発鉄道㈱(岡田真一社長)で実証実験を行うほか、来年度には市内小学校での安全マップ作りも予定し、関係者らが持つ英知と技術を結集させて地域、社会課題の解決に挑む。(菅野弘大)

 

 第4種踏切は、警報器や自動遮断機がある第1種と異なり、これらの装置が設置されていない。そのため、横断者は列車が来ていないかを目視または音で確認する必要があるが、全国的に事故が後を絶たない。
 国内では昨年4月、群馬県高崎市の上信電鉄路線の第4種踏切で、犬の散歩をしていた9歳の女児が列車にはねられる死亡事故が発生。女児は、踏切を先に渡った愛犬を追いかけ、列車の接近に気づかず踏切内に侵入したとみられる。
 この事故を契機に、全国的に踏切の廃止や第1種化をめぐる議論が激化。高崎市では、市内の第4種踏切の廃止を決定するなど、事故防止に向けた取り組みも活発化しているが、踏切が生活道の一部となっている住民もおり、抜本的な状況改善にはクリアしなければならない課題も多い。
 大船渡市でのプロジェクトは、岩手または東北の社会課題解決を目指す東京海上日動火災保険㈱東北損害サービス部が中心となって取り組みを進める。市内における第4種踏切は、岩手開発鉄道の路線に計8カ所あり、東京海上日動では昨年4月以降、同鉄道のほか、支援装置の開発に取り組む独立行政法人交通安全環境研究所、岩手県立大学、市、大船渡警察署、㈱谷地保険事務所などの関係機関にアプローチし、活動への賛同を得てチームの立ち上げに至った。
 8月には、盛町の岩手開発鉄道本社でキックオフミーティングを開催。参加者らの顔合わせも含め、取り組みの狙いを再確認したほか、同研究所による踏切に設置する支援装置の紹介、実証実験に向けての意見交換も行った。実際に路線の現地調査にも出向き、対象踏切の選定など、設置イメージを膨らませた。
 今後は、実際に列車を動かしての支援装置の実証実験を行う見込み。岩手開発鉄道の鈴木貴之鉄道部長は「こうした装置の設置は、利用者や運転手にとっても良い取り組みで、安全性の向上にもつながる。引き続き、踏切に関する啓発などの事故防止対策を講じていく」と話している。
 また、もう一つの大きな活動として、第4種踏切が設置されている地域の小学校を対象としたフィールドワークと安全マップ作りも計画。児童たちが実際に地域を歩くことで、身近な危険箇所を交通安全、防犯、防災の観点から知り、踏切事故への理解にもつなげようとの狙いがある。
 活動には、プロジェクトにも参加している県立大学総合政策学部の宇佐美誠史准教授が開発したアプリを活用予定で、本格的な実施は来年度になる見通し。