「前向きに出馬検討」 町長選 現職の神田氏 任期満了まで半年
令和7年2月4日付 1面
8月4日の住田町長の任期満了まで半年となった。2期目の現職・神田謙一氏(66)=下有住=の周辺からは3選出馬を望む声が多く、同氏はこれに対して「前向きに検討する」としており、正式な態度表明の時期に注目が集まる。一方、現時点で対抗馬擁立に向けた動きは見られず、早くも無競争ムードが漂っている。(清水辰彦)
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神田謙一氏
任期満了に伴う町長選は、昭和30年の町制施行から19回目となる。令和3年の前回選挙は「7月13日(火)告示、同18日(日)投票」の日程が組まれており、今回も同様の時期で日曜日投票の日程が有力視される。
現職の神田氏は日本獣医畜産大学大学院修士課程修了。昭和59年に住田町農協に入り、合併した陸前高田市農協を経て、平成19年住田フーズ㈱取締役生産部長、24年同社常務取締役に就いた。
町長を4期務めた多田欣一氏(79)=世田米=が勇退を表明したことにより、16年ぶりに「新リーダー」を選ぶこととなった平成29年の町長選に初出馬。多田氏の支持層を取り込みながら選挙戦を進め、企業経営に関わってきた人脈と経験も生かし、町議を辞して臨んだ新人との一騎打ちを僅差で制した。
就任1期目から、「住民生活の基本である『医・食・住』の充実」を重点に掲げて町政を運営。2期目に入り、医療分野では「在宅医療等のあり方検討会」を設置し、医療資源の限られる町内において関係機関と連携しながら誰もが住み慣れた地域で暮らせるよう、在宅医療を推進している。
「食」では、関係機関と連携しながら、土壌改良効果や二酸化炭素排出量削減が期待される「高機能バイオ炭」の実証試験などの耕畜連携事業を展開。「住」に関連しては、仮設住宅跡地に仕事と学び複合施設(愛称・イコウェルすみた)を整備して人材交流拠点とすることで、関係人口拡大とそれによる若者の移住・定住促進を図っている。このほか各種施策において独自のカラーを打ち出しつつ、自治体の枠を超えて近隣市と連携もとりながら町政運営に当たる。
一方で、前町長時代から最重要課題となっている木工団地2事業体の問題は、いまだ終結していない。町から巨額の融資を受けながらも破産した三陸木材高次加工協同組合と協同組合さんりくランバーに関して、町が農林業振興資金貸付基金からの貸付金や利息、遅延損害金の支払いを連帯保証人らに求めた裁判が令和2年10月から行われている。提訴から4年が過ぎた今も決着はついておらず、長期化している。
また、町内では毎年約100人ずつ人口減少が続き、基幹産業である農林畜産業の担い手不足、空き家や耕作放棄地のさらなる増加が懸念されている。近年、頻発している自然災害への備え、拡大する鳥獣被害対策など、地域課題は山積、細分化しており、次の4年間を担うリーダーには、多様化・複雑化する課題への柔軟な対応が求められる。
こうした中、神田氏の後援会(泉金一会長)内からも続投を期待する声が上がる。次期町長選について神田氏はこれまで、令和7年度に新たな町総合計画がスタートすることから、「まずは次期計画の策定に注力する」と答えるにとどめていたが、東海新報社の取材に対して「後援会からも要請を受けている。前向きに検討していきたい」と3選への意欲を示した。
これに対し、現時点で新人を擁立する動きはなく、2期連続無投票の可能性が高まっている。
1月31日現在の同町の有権者数は4119人(男2015人、女2104人)。前回選告示日と比べて477人少ない。