通院手段 掘り下げを 市地域医療懇話会 患者ニーズの把握が鍵に 新年度も議論継続へ
令和7年2月7日付 1面
大船渡市地域医療懇話会(会長・鵜浦哲朗気仙医師会長)は5日夜、大船渡町のおおふなぽーとで開かれた。昨年10月に続く開催で、通院の面から公共交通利用の現状を確認したほか、オンライン診療でも情報共有を図った。公共交通の乗客減少が続く中、市側は路線維持のためにも住民利用につなげる方向性を挙げた一方、患者ニーズの実態に合った議論や対策の重要性が浮かび上がった。懇話会では今後、通院手段に加え、国保診療所のあり方も現状を踏まえて意見を交わすことにしている。(佐藤 壮)
懇話会は、地域医療全体のあり方や将来的な方向性などの議論を深める場として設置。県保健医療計画などとの整合を図り、持続可能な地域医療提供体制の確保に関する検討を行う。
委員は医療関係者や学識経験者、関係機関などの代表者・関係者ら14人で構成。この日は委員12人に加え、渕上清市長が出席した。
渕上市長は「前回ご意見が多かった通院手段や、医師不足を補う有効な手段として期待されるオンラインについて議論を」とあいさつ。鵜浦会長は、医療における効率性や比較的元気な高齢者の活用、入院における地域完結率の低さ、入院から在宅となるまでのケアといった前回議論での発言を振り返り、「それぞれの立場で意見を述べる場であり、一つの方向性に絞ることは難しいが、具体性のある話ができれば」と語った。
その後の協議は非公開で進められた。事務局によると▽通院に係る移動手段・市による交通サービスの提供▽オンライン診療──をテーマとし、市側の説明に続き、出席者が意見を述べた。
移動手段では、三陸鉄道やJR大船渡線BRT、市内路線バスの利用者が平成27年比で21~33%減少している現状が示された。1枚で500円分を補助するタクシーチケットは距離要件緩和や配布枚数の増加を求める声がある一方、さらなる公共交通利用減が進む懸念から、利用者を増やす取り組みの重要性に理解を求めた。
情報通信機器を生かしたオンライン診療に関しては、全国各地の導入事例などを確認した。説明では患者の通院・受診や、医師の訪問診療・往診に対する各負担軽減、感染症対策などの利点を挙げた一方、診療内容によっては定期的な対面診療が必要になることや触診・血液検査などの難しさに言及。「かかりつけ医がきめ細かいフォローをするため、対面診療の補完的な役割を担うことが期待されている」とまとめた。
前回の懇話会で事務局は、市内の医科、歯科、薬局が平成20年には合計67機関あったが、昨年は51機関に減った状況を説明。民間開業医を含めた医療分野の担い手不足も課題になりつつある。
市はこれまで、地域医療施策として県立大船渡病院との関係強化や、医師会・歯科医師会との連携による在宅当番医制度の運営、三陸町での国保診療所運営などにあたってきた。人口減少や少子高齢化が今後も続くと見込まれる中、医師をはじめ医療従事者の不足・高齢化で、将来的には現行の医療提供が困難になる状況が懸念される。
終了後、渕上市長は「もっと利用者目線で通院の交通手段、移動の足を考えないといけないと感じた。昨年から今年にかけて住民懇談会でも多くの意見が出ており、基幹交通の利用促進だけでなく、通院に特化した確保策も大事」と話した。
鵜浦会長は「移動手段は市から説明を受けたが、患者のニーズがどの程度あるかデータが不足しており、もう少し掘り下げて検討しようという流れになった。オンライン診療は、時代のニーズでもあり、何年か先には当たり前になっていると思う」と総括した。
今後に関しては「医療は気仙2市1町が一つの単位になっており、市独自でやれることは多くない。その中でも国保診療所は市の管轄下であり、住民ニーズや市の考え方を聞くことにはなると思う。通院手段も、もっと深い議論ができれば」と話す。市側も新年度は3~4回懇話会を開催し、国保診療所運営でも現状説明や意見交換を行うことにしている。