傷者数(コロナ除く)は過去最少57人 令和6年の労災発生状況 大船渡労基署管内 2年連続で死亡事故報告なし

 大船渡労働基準監督署(西村浩二署長)は、令和6年における同署管内(気仙)の労働災害発生状況(速報値)をまとめた。前年から2年連続で死亡事故の報告はなく、新型コロナウイルス感染症を除いた年間の傷者数57人は、記録が残る昭和57年以降で最少となった。一方で、高年齢労働者(60歳以上)の災害が多くみられるため、同署では事業主に対して職場環境の改善といった事故防止策を講じるよう呼びかけている。(三浦佳恵)

 昨年の労災発生状況をみると、新型ウイルスを除いた傷者数は前年から24人(29・6%)減少し、昭和57年以降では初めて60人を下回った。新型ウイルスを含む傷者数は113人で、前年から8人(6・6%)減った。
 新型ウイルスを除く傷者数を業種別にみると、多い順に製造業19人(前年比1人減)、建設業10人(同5人減)、保健衛生業8人(同2人増)、商業8人(同5人減)、運輸交通業4人(同1人減)、その他3人(同2人減)、通信業2人(同1人増)、畜産水産業2人(同6人減)、農林業1人(同5人減)。
 傷者数が比較的多かった業種のうち、製造業は水産食料品製造業11人(同3人減)、水産食料品以外の食料品製造業2人(同1人増)、木材・木製品製造業2人(前年と同数)、窯業土石製造業2人(前年比2人増)、一般機械器具製造業1人(同1人増)など。保健衛生業は社会福祉施設の7人(同1人増)、商業は小売業の6人(同4人減)がそれぞれ多かった。
 建設業は建築工事業7人(同1人増)で、このうち木造家屋建築工事業が5人(同2人増)。前年は7人だった土木工事は労災報告がなかった。
 建設業で労災が減少したことについて、同署では「新型ウイルスの5類移行で休止していた安全パトロールや安全大会などが再開し、労働者の意識が高まった。東日本大震災からの復興工事が終わり、公共工事が少なくなっているのも要因ではないか」と分析している。
 事故の類型別でみると、最も多かったのは「墜落・転落」16人(28・1%)。次いで、「動作の反動・無理な動作」11人(19・3%)、「転倒」10人(17・5%)、「はさまれ・巻き込まれ」7人(12・3%)、「激突」と「切れ・こすれ」の各4人(7・0%)など。
 最多の墜落・転落では、はしご(脚立を含む)による事故が5人と3割余りを占めた。転倒災害は冬季特有の事故が減少したこともあり、前年を14人下回った。
 年齢別にみると、高年齢労働者が16人(28・1%)で、50代を含めると33人(57・9%)。経験年数別では、経験3年未満の未熟練労働者が15人(26・3%)と最も多く、その3割が墜落・転倒による事故だった。
 同署では、墜落・転倒災害の要因で多かったはしご・脚立の転移防止や正しい使い方、ヘルメットの着用といった安全対策の徹底を周知。高年齢労働者の労災については、「職場環境の改善や高年齢労働者に配慮した作業内容の見直しなどを行ってほしい」とし、未熟練労働者に配慮した取り組みも呼びかけている。
 平成24年以降の労災発生状況推移は別表。