森林クレジット販売開始 市有林のCO2吸収量約3000㌧ 市が新たな取り組み 益金を林業振興費に充当

▲ 森林クレジットを一定数購入した企業などに贈る盾を手にする担当職員

 陸前高田市は、森林による二酸化炭素(CO2)吸収量を売買可能にする国のJ─クレジット制度を活用し、森林クレジットの販売を始めた。価格は1㌧当たり1万5000円(税込み)で、気仙町内における市有林の令和5年度分CO2吸収量約3000㌧を販売。収益は森林整備や林業振興策に充てる。市は企業などに森林保全活動のフィールドとして市有林を提供する「企業等による森づくり制度(企業の森制度)」の運用にも乗り出しており、森林クレジットと同制度との両輪で、豊かな森を守り育てる好循環実現を目指す。(高橋 信)

 

 J―クレジット制度は、植林や間伐をして管理した森林のCO2吸収量を国が「クレジット」として認証する仕組み。クレジットとして認められたCO2吸収量は、1㌧ごとに販売、購入できる。購入者側は、企業活動で排出されたCO2量に相当するクレジットを購入することで、オフセット(埋め合わせ)できるメリットがある。
 クレジットの対象エリアは、気仙町内の市有林564・4㌶。市内で最も立木の成長が旺盛な地域で、間伐が盛んに行われるなど長年にわたる森林整備活動の実績が、CO2吸収能力に優れているとして発行の認定を受けた。
 クレジット発行量は、制度登録年の令和5年度分として約3000㌧。今後、20年度分まで年3000㌧程度の認定を受けることが可能となっており、総量は約4万8000㌧を見込んでいる。
 事業には、市が令和5年11月に森林資源活用に関する連携協定を締結した公益財団法人Save Earth Foundation(セーブ・アース・ファンデーション、渡邉美樹代表理事)、ワタミエナジー㈱(山﨑輝代表取締役)が参画。企業へのPRや販売にかかる手続きなどを連携して展開していく。
 購入者には「カーボンオフセット」の証明書を発行する。一定数量のクレジットを買った企業などには、地元材で作った記念の盾を贈る。
 販売収益は市が創設した市森づくり基金に積み立て、市全域の森林整備、林業施策の財源に充当する。
 市によると、市内の森林面積は1万8443㌶で、市総面積(2万3194㌶)の79・5%を占める。森林が有する多面的な機能の維持・増進が求められている一方で、国産材の価格低迷、生産者の高齢化など課題が山積しており、市は森林組合をはじめとする関係機関と連携しながら、森林整備の活性化策を模索してきた。
 森林クレジットはその大きな柱の一つで、同クレジットとの2本立てで「企業の森制度」の運用も開始した。同制度は高田町内の市有林を社員による森づくり、レクリエーション活動の場として企業に提供する仕組みで、コンビニエンスストア大手や水産大手など県外の7企業が参加を表明。4日に市と7社による協定締結式が行われた。
 石渡史浩副市長は「森林クレジットをより多くの企業・団体、個人に幅広く活用してもらえるようPRしていく。連携団体と販売価格や販売方法を議論し、それぞれの強みを生かした仕組みで運用していきたい」と見据える。