古里で誓う感謝と決意 寺澤光介選手が講演 パラ競技映像の解説も
令和7年2月9日付 7面
![](https://tohkaishimpo.com/wp-content/uploads/post/202502/68b4e0b1fdd42460e707318567f1ef77.png)
大船渡市末崎町出身のプロトライアスリートで、昨年9月に開かれた「パリ2024パラリンピック競技大会」のトライアスロン競技男子PTVI(視覚障害)で日本代表選手のガイド役も務めた寺澤光介選手(30)=SUNNY FISH所属、東京都=の講演会は8日、盛町のリアスホールで開かれた。国内外で活躍する寺澤選手が、パリパラ大会をはじめとした競技人生を振り返る講演を行ったほか、地元からの応援にも感謝を伝えながら、今後さらに世界のトップレベルを目指して競技力向上に励んでいく決意を示した。(菅野弘大)
寺澤選手は、東京2020パラ銅メダリスト・米岡聡選手(39)=三井住友海上=の競技パートナーとして昨年のパリパラ大会に出場。スイムパートをトップで通過するなど実力を示し、日本代表の一員として完走を果たした。
講演会は、市の寺澤光介選手応援プロジェクトチームが主催。大船渡アスリート応援団の公認アスリートである寺澤選手の貴重な経験を市民へ広く共有するとともに、郷土愛や誇りを意味する「シビックプライド」の醸成につなげようと開催。大舞台での活躍により、古里に感動や勇気をもたらした寺澤選手に、市民から感謝と激励の気持ちを伝える機会にも位置づけた。
同日は関係者らも含めて約100人が参集。第1部は、寺澤選手が「椿の里から目指した世界」と題して講演し、自身の生い立ちから、小学2年生で始めた水泳をきっかけにトライアスロンの道に進んだ経緯、プロ選手としての苦悩や挫折、パリパラ大会の裏側などを赤裸々に語った。
第2部では、寺澤選手に加え、パブリックビューイングで実況、解説を務めた県トライアスロン協会副理事長の大志田誠さん(49)、水泳のパラアスリートの村田奈々さん(41)ら関係者を交えたパネルディスカッションを実施。市国際交流員の秦勉アンドリューさん(24)による盛大な英語のアナウンスで入場した寺澤選手は、パリパラ大会の競技映像を振り返りながら、レースの状況を詳細に解説した。
スイムパートでトップに立った展開を「想定通り」と語り、バイクパートでのアクシデントも乗り越え、最後のランパートは米岡選手と両手を掲げてゴール。「目指した順位には届かなかったが、最後の直線は2人で楽しんで走り切れた。多くの方々への感謝を胸にゴールできて良かった」と振り返った。
個人と2人で行う競技の違いが「自分の可能性を広げてくれた」と手応えを示し、地元からの応援についても、「今までのトライアスロン人生で一番の応援をもらった。パラリンピック出場は、わくわくのほかに不安もあったが、地元からのエールに元気をもらい、不安を払拭してくれた」と感謝を示した。
米岡選手との活動は一区切りとなり、今年は個人競技に集中していくという寺澤選手。「パリでの経験を生かし、アイアンマン世界選手権に出場することが今後の目標。ただ、もう一度オリ、パラの景色を見たい思いもあるので、自分にできることがあれば協力したい」と抱負を語った。
大志田さんと村田さんも「米岡選手と2人でパラリンピックを完走したことは、感嘆に値する。この活動をもとに、健常者と障害者の垣根を取り払い、一緒にスポーツができる認識を広めていく役割を担ってもらえたら」「パラ競技を一緒にやってくれる寺澤選手の存在は、パラ選手の一人としてうれしく思う。さまざまな可能性を広げ、パラスポーツを一緒に広めていってほしい」とさらなる飛躍に期待を込めた。
盛岡市から参加した加藤久悟さん(河北小3年)は「自分もトライアスロンをやっていて、リズム良く走ることが大切と具体的なアドバイスをもらった。自分も寺澤選手のような選手になれるように頑張りたい」と目を輝かせていた。
大船渡市では今後も、寺澤選手の活躍を願って、活動を後押しする取り組みを続けることとしている。