岸壁新設工事が本格化 市魚市場の南側を延伸 後背地含め8年度完了目指す

▲ 岸壁新設工事が本格化する市魚市場南側

大型船の水揚げ対応増強へ

 

 大船渡市大船渡町の市魚市場南側で、県による岸壁新設工事が本格化する。既存の南側岸壁は大型サンマ船5隻が接岸できるが、盛漁期には入港が重なる課題を抱える。新たに137㍍の岸壁を設け、大型船がさらに2隻係留できる環境を整える。岸壁泊地の水深は7㍍と既存の5㍍よりも深く、大型巻き網船への対応力も向上。令和7年度に岸壁新設、8年度は後背地整備などを行い、9年度からの本格供用を見据える。(佐藤 壮)

 

工期完了後のイメージ図

 県沿岸広域振興局大船渡水産振興センターによると、今月から陸地側での作業が本格化。3月以降は海上でも着手し、水質汚濁防止膜を設置したうえで進めることにしている。
 海上では、岸壁整備部分に沿っての鋼矢板打設や一部区間の埋め立て、海底の浚渫などを計画。工期中は、付近を通る県道の交通規制は行わないほか、既存岸壁での水揚げ作業の制限を求める予定もないという。
 7年度中に、岸壁本体の工事を完了させる方針。8年度は駐車場などとして活用される背後地の用地造成・整備を見込む。照明灯設置の検討に加え、市による給水設備の設計も進められている。
 漁船の水揚げ作業といった供用開始は、すべての工事を終えてからになるという。現段階では、8年度末の完了を見据え、秋を中心とするサンマ船は9年シーズンからの活用を見込む。
 同センター漁港漁村課の佐藤文範課長は「魚市場は地元の漁業関係者が直接関わる施設。一日でも早い供用開始を目指して工事を進める。早く整備することで、地域の活性化に貢献できれば」と話す。
 現在の南側岸壁は約290㍍で、大型サンマ船5隻が接岸可能だが、秋の盛漁期には入港が重なる。今回の延長により、さらに2隻接岸・水揚げができるようになる。水深が深い岸壁の新設で、イワシやサバなどを水揚げする県外からの大型巻き網船への対応力が向上する。
 昨年秋も1日だけで10隻超に及ぶサンマ船の水揚げがあった際には、周辺岸壁での接岸や、海上で水揚げを待つ光景も見られた。洋上待機では、1隻当たり平均2時間程度の〝むだ〟が生じるとされる。2~4月のイサダ水揚げ時も、南側岸壁には漁船がずらりと並ぶ。
 岸壁延伸を巡っては、衛生品質管理の充実強化や水揚げ増強による水産物の安定供給に向け、3年4月に大船渡魚市場㈱をはじめとする関係者から要望が出ていた。4年度から測量設計調査や用地買収・物件補償などが進み、8年度までの全体事業費は約15億円となっている。
 現魚市場施設の利用が始まった平成26年度以降では、大規模な増強工事となる。市魚市場は県内随一の水揚げを誇る中、さらなる産地としての競争力強化や、輸出促進による水産業の成長産業化が期待される。東日本大震災の復旧・復興事業が収束した後の大型事業としても注目を集める。