気仙にも真珠養殖のアコヤガイ ホタテの稚貝に付着 海水温の上昇が起因か
令和7年2月14日付 1面
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気仙沿岸のホタテ養殖が行われている海域で、主に西日本で真珠養殖に用いられるアコヤガイの幼貝が相次いで見つかっている。海水温が12度前後に下がると死滅し、太平洋側は千葉県が生息の北限とされる一方、近年は宮城県でも確認され、活用も視野に入れた検討が進む。海水温の上昇などで養殖環境の不安定状況が続く中、漁業者は「海が変わってきている。そこに人がどう合わせていくかが問われる」ととらえる。(佐藤 壮)
漁業者「海が変わってきている」
大船渡市三陸町綾里の小石浜でホタテ養殖などを手がける県漁業士会長の佐々木淳さん(53)は8日と11日、ホタテの稚貝に付着していた大きさ1・5㌢前後のアコヤガイを次々と見つけた。この時期、漁港では天然採苗から育てたホタテの稚貝が入ったかごを海中から上げ、付着物を除去して再びかごに戻す作業が行われる。貝に付いていた見慣れぬ形に気づいた。
ホタテは、小石浜漁港から4㌔ほど離れた越喜来湾内で育ててきた。アコヤガイの幼貝は南方からの暖かい海流に乗って流れ着き、付着したとみられる。
佐々木さんは昨年12月にも発見。「ずいぶん変わった形だな」と思い、漁業士会のネットワークを通じて、真珠養殖が盛んな三重県の漁業者に画像を送ったところ「アコヤガイで間違いない」と返信が来た。
陸前高田市立博物館によると「過去の記録では、昭和10年に広田湾での記録があるが、近年の記録はないと『いわてレッドデータブック』(平成26年)にある。昨年12月にも大船渡の方から問い合わせがあり、アコヤガイと確認した。最近の海水温の上昇に起因するものと思われるが、ここ2、3年の影響による一時的なものなのか、定着できるようになったのかは現時点では不明」という。
越喜来湾内では本年度、別のホタテ養殖漁業者もアコヤガイの幼貝を見つけた。一部はホタテの貝にそのまま付着させ、様子を見ている。
佐々木さんは「貝にくっついて、形になるということは、養殖としても可能な状況になっているということではないか」と分析する。アコヤガイは隣県の宮城県でも見つかり、同県は真珠養殖の検討を進めている。
アコヤガイは真珠貝とも言われ、養殖真珠は三重県の伊勢志摩や愛媛県の宇和島、長崎県の対島・壱岐が主要産地とされる。アコヤガイの確認は新たな養殖漁業につながる兆しともいえるが、漁業者は手放しで喜んでいる状況ではない。
大船渡近海の海水温は、平年比で5度前後上昇している時期もあるとされる。ホタテは冷水性であり、水温が高い状態が続くとへい死の可能性が高くなり、近年は深刻な影響が広がる。さらに、ワカメやコンブなどの海藻類も影響を受け、秋サケは壊滅に近い水揚げ量となっている。
佐々木さんは「ホタテは2年以上かけて育てるが、2年目の夏場を乗り越えられないホタテが見られるようになった。この先どうなっていくかは分からないし、簡単に環境変化を止めることはできない。海の環境が変わってきている。そこに人がどう合わせていくかではないか」と話す。