宿泊者数 低水準続く 令和6年実績 前年比7%減 観光入込客数は微増
令和7年2月16日付 1面

大船渡市内の令和6年における観光入込客数は、前年を2・1%上回る65万953人だった一方、宿泊者数は前年比6・8%減の12万9192人となった。大型イベントは通常開催に戻っているが、いずれもコロナ禍前の令和元年実績とは、大きな開きがある。外国人観光客は2年連続で大きく伸びた。より多くの観光客が訪れ、長く滞在するための戦略づくりの重要性が浮かび上がる。(佐藤 壮)

昨年10月に開催された市産業まつり。震災後では最多の人出となり、観光入込客数増を後押しした
6年の観光入込客数を月別にみると、1月と2月、10月が前年を大きく上回った。特に、10月は令和以降では初めて8万人を超えた。同月に開催された産業まつりは、2日間で計3万4000人が訪れ、東日本大震災以降では最多となった。
月別で最も多かったのは、8月の10万7993人だったが、前年を約1200人下回った。まつりイベントなどは通常開催となった一方、天候不順の影響もあったとみられる。
令和元年の8月は15万人を超えており、コロナ禍前には戻りきれていない。例年と同様、冬場の入り込み客数が少ない特徴も浮かび上がる。
観光入込客数は震災後、100万人を超える年もあった。平成27年以降は落ち着き、令和元年は約79万人だったが、新型ウイルスの影響で翌年実績は半数近くにまで落ち込んだ。3年から4年連続で前年を上回っているものの、伸び率は鈍化している。
宿泊者数をみると、前年を上回ったのは1月と10~12月。市では令和5年に続く減少の要因として「4年は(宿泊料金から最大4000円支援する)助成を行ったこともあって伸びたが、戻っていない」と分析する。
年間で20万人を超えていた令和元年との比較では、全ての月で下回り、特に4~6月は半減となっている。東日本大震災の影響で調査できなかった平成23年を除くと震災後では最少で、コロナ禍でも維持していた13万人台を割り込んだ。
復興事業で整備された大船渡駅周辺地区には宿泊施設や飲食施設が多く進出し、宿泊客の受け入れ環境は、沿岸部でも強みの一つとなっている。一方、観光入込客数と宿泊客数の開きからは、滞在時間の短縮傾向も浮かび上がる。三陸沿岸道が全線開通し、各地からの移動がスムーズになったことで、立ち寄らずに通過する割合の増加が懸念される。
外国人観光客数は2725人で、前年比89・1%(1284人)増で、コロナ禍前の令和元年実績1322人も大きく上回った。9月の来訪者が730人と突出して多く、台湾からの団体や、みちのく潮風トレイルを巡るハイカーが目立ったという。
年間実績を国別に見ると、最多は台湾の1274人で、前年実績の2・6倍に増加。アメリカが238人、オーストラリアが180人で、いずれも2・4倍となった。
教育旅行客数は6227人で、前年比3・7%(241人)の減。コロナ禍で県内からの来訪が増えた令和3、4年は1万人前後で推移していたが、落ち着きつつある。
観光入込客数や宿泊者数の動向は、13日に開かれた本年度第3回市観光ビジョン推進委員会(委員長・近江学市観光物産協会常務理事、委員12人)の中で示された。委員からは「外国人が増えたという実感があまりない。どういった場所を回っているのかを把握してくべき」との意見が寄せられたほか、日本人を含めた全体実績に関してもデータを活用した戦略的な観光振興策の重要性が話題に上った。
観光入込客数や宿泊者数の推移は別掲。