10年度までに年間移住者300人目指す 転入後の市内定着も課題に

 陸前高田市は令和10年度までに、年間のU・Iターン者数300人突破を目標に掲げている。市まちづくり総合計画前期基本計画(令和元年度~5年度)では年100人としていたが、4年度は目標の約2・5倍、5年度は約2・8倍に伸び、後期基本計画(6~10年度)に記載する目標値を上方修正した。達成に向け、独自の補助金制度拡充や市民らとの交流イベントなど対策の促進が期待される。一方で、転入後さまざまな理由で市外に転出するケースも見られ、市内定着の支援も求められそうだ。(高橋 信)

 

市内で行われた移住体験プログラム。本年度は22~24日を予定しており、県外の9人が参加する(6年2月)

 市によると、4年度のU・Iターン者数は前年度比216人増の246人、5年度は同32人増の278人。内訳は4年度がUターン87人、Iターン159人、5年度がUターン102人、Iターン176人だった。
 平成29年度以降の推移をみると、多い年で100人台だったが、4年度に急増した。大幅増の主要因は、U・Iターン者向けの補助金受給者などを根拠としていた集計方法を、転入届の受付時にアンケートを採る全県統一の手法に変更したため。しかし、移住相談件数は3年度82件、4年度104件、5年度182件と順調に増加しており、移住希望者の同市への関心増がうかがえる。
 また、5年度は移住者の新生活にかかる経済的な支援策を強化。住宅取得費の補助額(商品券最大100万円分)について、子育て世帯の場合、一律100万円分を加算し、同制度の対象外となる若者向けの助成制度も新設した。
 こうした独自の取り組みなどが評価を受け、宝島社が発行する『田舎暮らしの本』2月号の特集「2025年版住みたい田舎ベストランキング」では、「人口1万人以上3万人未満のまち」のうち、「若者世代・単身者」が住みたいまち部門で、陸前高田市が17位にランクインした。
 市からの業務委託を受け、NPO法人高田暮舎も、移住・定住の相談、空き家の物件案内、交流イベントの開催など、さまざまな事業を展開している。
 22日(土)~24日(月)には、同法人が企画・運営する移住体験プログラム「お試し高田暮らし」(市主催)が行われる。漁船の乗船体験や温泉入浴、地場産品を使った会食などを楽しめる2泊3日の人気プログラムで、定員9人に対し、関東圏を中心に17人の申し込みがあった。
 同法人の移住コンシェルジュ・石田裕夏さん(37)は「陸前高田にはすでに移住者が多くおり、そのことは新たに移住を希望する人にとって『外部の人を受け入れるサポート体制が整っているんだ』などという安心感につながっていると思う。来年度以降は親子向けの移住体験プログラムなども考えていきたい」と見据える。
 一方で、移住者の定住率に着目すると課題が残る。
 市は平成28年度から、地方に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の委嘱を行っており、5年度末までの着任者は累計36人。うち隊員の任期(最長3年)を終えたのは32人で、この中で任期後も市内に住み、活動しているのは16人と、定住率は50%だった。総務省がまとめた直近5年(平成30~令和4年度)の定住率全県平均65・3%、全国平均69・8%を大きく下回り、直視すべき問題だ。
 市地域振興部の村上知幸次長「U・Iターン者数が大幅に伸びたのは集計方法の変更が要因ではあるものの、人数は増加傾向にあり、高田暮舎などと連携した各種取り組みの成果と認識している。またUターン者数が想定よりも多い実態が分かり、限られた予算の中でUターン者への支援策強化が可能か検討したい。定住率は大きな課題であり、移住者が地域に溶け込めるようコミセンとの連携などを考えていく」と話している。