産地の〝今〟伝える施策を 気仙の水産関係団体などによる協議会 大船渡で会合 SNS活用、情報発信強化へ
令和7年2月20日付 7面

気仙の生産者団体や水産加工流通団体、行政による第2回産地力向上協議会が18日、大船渡市大船渡町の県漁連南部支所で開かれた。サンマや秋サケをはじめとした主力魚種の不漁が長引く中、市魚市場への水揚げ状況や全国的な魚種変化に関する報告が行われたほか、SNS等を活用した水産情報の発信、未利用・低利用魚種の活用に向けた取り組みの事例を共有。産地の状況を伝える情報発信強化と体制整備についての協議も行い、出席した関係者らが一体となって、産地の〝今〟を伝えていくための施策を探った。(菅野弘大)
同協議会は、これまで地域を支えてきた主要魚種に代わって、水揚げが増加、安定している魚種の有効利用や、新たな漁業・養殖業の導入を進めることで、産地としての活力を維持、発展させることを狙いとして、昨年に続いて2回目の開催。気仙広域水産業再生委員会、大船渡湾冷凍水産加工業協同組合、気仙両市、県大船渡水産振興センターが主催し、大船渡市、越喜来、綾里、吉浜、広田湾、盛川各漁協の組合長や湾冷役員、気仙両市の水産課職員など主催機関の関係者に加え、オブザーバーとして県沿岸広域振興局水産部、県水産技術センターの職員ら約40人が出席した。
冒頭、主管機関として大船渡水産振興センターの志田明石所長が「昨今の水産業、地域経済を取り巻く情勢は容易ではなく、当地域が選ばれる産地として消費者へ安全、安心な水産物を提供していけるよう、力を結集して取り組んでいくことが大切」とあいさつした。
はじめに、令和6年の水揚げ状況について、大船渡魚市場㈱の佐藤光男専務が説明。全国33カ所の主要産地漁港の取扱高において、大船渡は数量が16位の2万8213㌧(前年比15%増)、金額は20位の71億6234万円(同27%増)でいずれも県内トップだった。
漁業種別では、巻き網、一本釣りのカツオ、公海漁場の漁解禁前倒しとなったサンマ、火光利用敷網のマイワシ、イカ釣りのスルメなどが前年を上回った。特にも、マイワシは前年と比べて12月の水揚げが大幅に増加し、「漁獲が例年より1カ月早かった」と現場の肌感を示した。秋サケは数量、金額ともに前年から約半減の壊滅状態だった。
全国的な魚種の水揚げ推移をみると、サバ類は平成30年から減少傾向である一方、マイワシは数量増が続いており、令和2年から高水準の横ばいに。ブリ類は東日本大震災の平成23年と比べて約半減、サンマは昨年やや上向きとなったが、動きは依然低調で、予断を許さない状況であるとした。このほかにも、TAC(漁獲可能量)を踏まえた新たな漁獲規制についても「注視していかなければならない」と述べた。
続いて、昨年10月に着任し、水産業振興・情報発信事業に取り組む市地域おこし協力隊員の浦嶋孝行さんと、地域資源の活用に向けた共同研究などを行う北里大学海洋生命科学部附属三陸臨海教育研究センター地域連携部門研究員助手の清水恵子さんが事例紹介として登壇。
浦嶋さんは着任以降、市の公式Xと自身のインスタグラムを活用して、市魚市場の水揚げやウニ、カキ、ホタテ、アワビ、ワカメなど水産物の漁、養殖現場の現状を発信。「水産のまち」を掲げる大船渡の知名度向上やファン獲得、就業者増加につなげようと取り組む活動の様子を伝え、「浜の皆さんにとっての当たり前は、消費地の人々にとっては魅力的なことかもしれない。大船渡の水産業を身近に感じてもらうため、情報提供や取材協力をお願いしたい」とまとめた。
「未利用・低利用魚の活用に向けた取り組み」について情報提供した清水さんは、自身が地域の事業者らと共同で手がけてきた事例を示しながら、メリット、デメリットを説明。これまであまり活用されてこなかった魚種を使うことで、間接的にフードロス問題や資源管理に貢献できるとした一方、規格外のサイズや漁獲量の少なさ、見た目、調理法の問題から利用しにくい懸念点を挙げた。
これらを踏まえた一つの案として、かまぼこなどの練り物での活用法を紹介。「未利用・低利用魚は地域活性化のツールとなる」と呼びかけ、実現のためには関係者らとの連携が必要不可欠であると理解を求めた。
同協議会では今後、産地力の向上と消費者への理解、浸透を目指し、情報発信の強化と体制整備に取り組む。仮のスローガンに「大船渡品質」を据え、生産、加工、流通、飲食各業界の活動を、SNSなどで広く発信する。スローガンおよび定義の検討に加え、関係者による体制構築の試行などに取り組み、来年3月には決定したスローガンの開始を宣言する見通し。