東日本大震災14年/復興後見据えた水辺空間形成へ 市、「かわまちづくり計画」の来年度策定目指す 河川と融合したにぎわいあるまちを

▲ 震災復旧事業で整備された川原川公園

 陸前高田市は、河川空間とまち空間が融合したにぎわいある水辺空間の形成を目指し、「陸前高田かわまちづくり計画」の策定作業を進めている。東日本大震災発生から来月11日で14年。復旧・復興事業で整えた中心市街地の活性化など今後焦点となる課題の解消に向け、地元で親しまれている河川特有の資源を生かしたまちづくりに踏み出す。来年度中の策定を見据えており、県や民間団体など関係機関と連携し、ハード・ソフト両面の施策を展開していく。(高橋 信)

 

さくらの杜プロジェクトの一環で川原川公園で行われたサクラの植樹(6年3月)

 市は19日、同計画の素案に対するパブリックコメント(意見公募)を行うと発表した。意見の受け付けを始める27日(木)に、素案の中身を公表する。
 かわまちづくりは、河川管理用通路や親水護岸整備などの「ハード施策」と、河川の多様な利活用促進、イベント実施などの「ソフト施策」を展開することで、良好な空間形成を図る取り組みを指す。
 自治体や民間事業者、地域住民、河川管理者など、多様な主体が連携して取り組むことから、▽「かわ」と「まち」の新たな可能性(地域資源)の発見・発掘▽関係主体のネットワーク形成▽地域の課題解決──など、さまざまなメリットがあるとされる。国が地域での実践を推し進めており、国交省が創設した「かわまちづくり」支援制度には、全国280カ所超が登録されている。
 陸前高田市では、震災犠牲者の追悼、教訓伝承、にぎわい再生などの機能を有する高田松原津波復興祈念公園が令和3年12月に全面開園。気仙町の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」が今年5月に開館すれば、14年にわたって展開された主要なハード復旧事業は完了となる。
 5年の市観光入込客数は127万6320人(県まとめ)に上り、震災前の水準に戻り、本県沿岸の中でトップとなった。
 一方で、観光利用は高田松原地区周辺の短時間通過型が多く、被災地ツーリズムによらないにぎわいの創出が求められている。東北最大級のサクラの名所形成を目指すプロジェクトや、グリーンスローモビリティを活用した環境に優しい移動手段導入など、将来を見据えた取り組みが始まり、市はこうした民間の動きを捉えながら、水辺を生かした地域活性化を図ろうと、かわまちづくり計画を策定することとした。
 計画の策定協議会は、大学教授ら有識者や市内各種団体の代表者ら8人で構成。5年度以降、計4回会合を開き、素案の中身を審議してきた。
 関係者によると、計画期間は7~11年度の5年間。気仙川、川原川を生かした動線を形成し、祈念公園─中心市街地間の人の行き来を促すこととしている。川を生かして学ぶ、楽しむ、体験する場も提供する。
 パブリックコメントの募集期間は、27日から3月28日(金)まで。市内各地区コミュニティセンター、市役所4階の土地活用推進課窓口で閲覧でき、市ホームページでも公開する。市は計画策定後、国交省の支援制度登録を目指す。