第50回東海社会文化賞顕彰式 絵本通じ子どもの育成に尽力 おはなしペパン(陸前高田)が受賞(別写真あり)
令和7年2月21日付 1面

福祉や文化、教育、産業などの分野で地道な活動を続けている個人、団体を顕彰する第50回東海社会文化賞(東海社会文化事業基金主催)の顕彰式は20日、大船渡市大船渡町の東海新報社で開かれた。今回は、読み聞かせやストーリーテリング(素話)などを行う「おはなし会」を中心とした活動を通じて子どもに本の楽しさを伝える、陸前高田市の子ども読書支援グループ「おはなしペパン」(馬場幸子代表)が受賞。馬場代表らは、今後も絵本の魅力と向き合い、子どもたちの育成に尽力する思いを強めた。
平成5年12月に設立した同グループは、東日本大震災による中断を挟みながらも、30年にわたって子どもや大人を対象とするおはなし会を開く。また、技術を高めるために会員同士で勉強会の場も持ち、実践的な活動を続けてきた。
顕彰式には馬場代表(65)と会員の蒲生孝子さん(76)が出席。式では、同基金代表の鈴木英里東海新報社社長が「気仙の子どもたちが持つ他者をおもんぱかる資質は大人たちが育んだもので、おはなしペパンがその一端を担ったものと確信している。これからも子どもたちと、子どもを育てる大人たちのために活動を続けてほしい」とあいさつ。長年の活動をたたえ、気仙スギ製の顕彰状などを贈呈した。
馬場代表は設立からの活動を振り返り、大きな転機が2度あったと回顧。1度目は政府が「子ども読書年」に定めた平成12年で、国が子どもの読書を推進。おはなしペパンも県の委託を受け、気仙周辺のボランティアグループのネットワークのまとめ役として活動を展開。19年には、本の著者が学校などを訪問して出前授業を行う「オーサー・ビジット」を独自に企画。グループ自らが働きかけて各地の作家へ依頼し、実現させた。
2度目は23年の東日本大震災。会員1人をはじめ、家族や自宅をなくした会員も多くいた。活動が停滞した中で、機会を見つけて子どもたちに絵本を読む場を持ったところ、多くの子どもが集まった。馬場代表は「子どもたちが楽しんでくれて、絵本の力はすごいと思った」と話す。
結成20周年時には、仮設住宅へ出向いて活動。子どもはもちろん、大人も喜ぶ様子を見て、広い世代から求められていたことが分かったという。馬場代表は「子ども読書支援グループとして活動するとともに、大人の方とも本の世界を楽しみ、分かち合っていきたい」と、震災の中で得た考えを振り返った。
蒲生さんも「本を読むことは、生きる力を身につけることでもある。自分が困った時に、本を読んだ時のことを思い出すのも大事だと思っていて、そこを代弁していきたい」と、絵本が子どもの生き方に与える影響を話した。
「絵本を読む時の主役は自分たちではなく、絵本と、聞いてくれる子どもたち。読み聞かせはパフォーマンスではないので、読む人が目立つものではない」と理念を語った馬場代表。「自分なりにアレンジすると、作家にも失礼にあたる。描かれている通り読んでいきたい」と、絵本そのものの魅力を伝えていく思いを強めていた。
東海社会文化賞は、東海新報社創立15周年を記念して昭和48年に創設。気仙で名利を求めず社会に貢献した陰徳の個人・団体を顕彰している。受賞者数は今回を含め、通算73個人54団体となった。
(齊藤 拓)