東日本大震災14年/交流と学びの成果発表 1月、米クレセントシティ訪問の高田高生 被災を機に海越え絆育む(別写真あり)

▲ 市民らを前に交流事業の成果などを発表する生徒

 国際姉妹校提携を結ぶ陸前高田市の高田高校と米カリフォルニア州クレセントシティ市のデルノーテ高校による国際交流事業の報告会は24日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。1月にクレセントシティに派遣された高田高生がデルノーテ高生との交流活動や、滞在を通じた学習成果を発表。14年前の東日本大震災を機に友好関係を育んでおり、生徒たちは「今回の訪問を将来の夢に生かしたい」などと決意を語った。(高橋 信)

 

1月にクレセントシティを訪れた生徒ら(陸前高田市提供)

 渡米したのは同校1~3年生9人。市からの財政支援を受け、1月5日に出発し、デルノーテ高に短期留学体験したほか、現地のホストファミリーなどと交流。同月12日に帰国した。
 この日の報告会には学校関係者や佐々木拓市長、山田市雄教育長、クレセントシティ友好の会の大林孝典会長、市民ら約40人が出席。訪問団メンバーのうち生徒7人が臨み、食習慣、子どもの遊び、ファッション、グローバル化など、それぞれにキャリア形成を見据えて設定した現地での探求テーマの調査結果を発表した。
 日米におけるポスターのデザインについて調べた佐藤花菜さん(1年)は、両国のデザインの特徴を踏まえて自作した国際交流事業用のポスター案を提示。「最終日には携帯に頼らずコミュニケーションを取れるようになった。たくさんの同世代とSNSでつながり合えて良かった」と振り返った。
 村田昂太郎さん(2年)は、クレセントシティでの地域活性化策を紹介。「自然豊かな土地を生かしたアクティビティーがたくさんあり、スポーツイベントも盛ん。陸前高田でもSNSを活用して情報発信し、スポーツイベントで盛り上げれば地域活性化につながると思う」と提案した。
 保育士を目指しているという中村由奈さん(2年)は、日米の子どもの遊びの共通点、相違点を説明。「予想以上に共通点が多く、遊びの違いから性格の違いを導き出すのは難しいということが今回の訪問で分かった。学んだことを将来の夢に生かしたい」と力強く語った。
 両校の交流は、震災の津波で流された高田高海洋システム科の実習船「かもめ」が、発災から約2年後の平成25年4月にクレセントシティに漂着したのをきっかけに始まった。デルノーテ高生らの尽力で同年10月に高田高に返還され、29年に国際姉妹校となった。30年には陸前高田、クレセント両市が姉妹都市協定を締結した。
 両校の生徒派遣は、海を越えて奇跡的につながった絆を時間が経過しても紡いでいこうと、1年交代で実施。新型コロナウイルス禍の休止を経て、昨年度デルノーテ高からの派遣で再開し、高田高生の訪問は本年度5年ぶりに行われた。来年度からは生徒の派遣を年1回に増やす計画を立てている。
 山田教育長は震災後展開されているクレセントシティ市や愛知県名古屋市との中高生同士による交流事業に触れつつ、「大変素晴らしい発表だった。陸前高田の子どもたちは交流を通じて国内のみならず、海外にも関心を持っているようになっており、教委としては今後もそうした機会を提供したい」と講評した。
 佐々木市長は「数ある国際姉妹都市の中で、奇跡的な縁でつながっている事例は少ないと思う。語学を勉強するのはものすごく大変だが、その先にクレセントシティの人たちとコミュニケーションを取れるということを励みにして勉強してほしい。この友好関係をまち全体に波及させたい」と述べた。