「おいしい」から魅力発信を 学校給食で地元事業者と連携強化 ふるさと納税生かし来年度から新事業展開へ
令和7年2月25日付 1面

大船渡市教育委員会は令和7年度、市のふるさと納税基金を活用し、学校給食を生かした地産地消の取り組みに力を入れる。「OEC(おいしい)地元発見デー」事業と銘打ち、地元産食材や市内で加工された食品を中心とした特別メニューの提供を定期的に行う方針。市内では、4年度から市内事業所が生産・加工する食材を学校給食を通じて子どもたちに知ってもらうプロジェクトが進められており、これまでの地元事業者や給食関係者との〝スクラム〟を生かして充実を図る。(佐藤 壮)
市は新年度一般会計予算に、事業費1511万円を新規で計上。財源のうち、約1300万円はふるさと納税基金を充当する。
近年、食の多様化などにより、市内の児童・生徒が地域資源である地元産食材に触れる機会が減少。市教委では、地元産食材の魅力や地産地消の意義などを伝える取り組みを通じて一層の食育推進を図ろうと、新たな事業に乗り出す。児童・生徒に食材や地元事業者の技術力など、大船渡の魅力を再発見してもらう狙いも込めている。
今年5月以降、学校給食センターや学校給食共同調理場ごとに特別メニューを提供する「OEC給食の日」を設定。おおむね統一した食材を提供する。オンラインや動画、各種資料などを生かして、事業者から子どもたち向けのメッセージを伝えるほか、食材の説明も行う。家庭でも給食の味が楽しめるよう、レシピの一部を公開することにしている。
現段階では、長期休業がある月を除く形で8回を計画。通常よりも190~160円高い1食当たり500円程度のメニューを提供する。ふるさと納税基金を活用することで、給食費の保護者負担は据え置きとする。
7年度の対象者見込みは、児童・生徒や教職員で計2254人。食材はイカやサンマ、イワシ、サバといった水産品のほか鶏肉やミニトマト、イチゴ、タマネギ、ピーマンなど幅広く想定し、地元事業者が製造する食品加工品も積極的に生かすことにしている。
市教委では「地元産食材を活用することで児童生徒たちが地域産業に理解を深め、愛着や誇りを醸成するきっかけになれば。生産者や企業と連携しながら地元産あるいは地元で加工した食材を取り入れることで、地元産業の振興につなげることもできる」と期待を込める。
新事業の方針は、20日に立根町の北部学校給食センターで開催された「地元給食バトンリレープロジェクト意見交換会」でも、出席した市内の食品製造事業者や給食センター関係者向けに説明が行われた。
このプロジェクトは、子どもたちに地元の食材や企業への関心を高めてもらおうと4年度から本格化した。大船渡町のサンコー食品㈱(小濱健代表取締役)が発起人となり、3年度に同社でインターンシップを行った大学生が給食メニューを考案し、一部小中学校で採用されたのを弾みに行政や他事業所にも働きかけ、市内で賛同が広がっている。
本年度は、市内事業所が製造・加工するイカ、鶏肉、イワシ、サンマの各加工品や、菓子製品などが提供された。給食関係者からは「社会科見学で各製造現場を知り、その後に食べることで子どもたちの関心が高まる」「物価高騰下でも安定的に供給してもらった」、事業者からは「この取り組みを聞き、市外からも給食の食材として引き合いがあった」「給食を通じて、地元のファンづくりにもつながっている」といった声が出た。
新年度もOEC事業と連動する形で、食に関連した地元事業者と給食関係者のさらなる連携強化を図る方針。地元からの野菜や海藻の確保に加え、近年は地元で水揚げされる魚種に変化が出ている中、まとまって漁獲される魚種の活用なども検討することにしている。