1週間余で3度目 新たな大規模火災発生 赤崎町合足から出火 綾里全域などに避難指示 延焼拡大で建物被害も(別写真あり)
令和7年2月27日付 1面


茶屋前で県警の警備船から下船する住民=大船渡町(26日午後5時36分)
26日午後1時ごろ、大船渡市赤崎町合足地内で火が出ていると、消防に通報があった。火は強い風にあおられて三陸町綾里方面へと移り、延焼が拡大。市は合足と綾里地区全域に避難指示を出した。同日午後5時現在で焼失面積は600㌶以上。同7時現在、延焼は続いている。綾里地区の中心部まで火が広がり、多数の住宅被害が確認されている。被害の詳細やけが人などの情報は不明。綾里では19日に発生して320㌶余りを焼いた林野火災が25日に鎮圧したばかりで、同日には陸前高田市小友町で発生し、隣接する大船渡市末崎町まで延焼した林野火災も。1週間余りで3度目の大規模火災という異常事態に住民は不安を募らせ、連日の消火活動にあたる消防職団員の疲弊が懸念される状況となっている。
異常事態に不安広がる
大船渡地区消防組合消防本部の火災発生覚知は午後1時2分。合足漁港にいた人から通報があった。
同日の大船渡市の最大瞬間風速は18・1㍍。沿岸南部に強風、乾燥の両注意報が出されていた中、東の綾里方面へと延焼が拡大していき、小路、石浜、港、田浜、岩崎、野々前の各地域で住宅被害が見られる。強風の影響でヘリコプターによる消火活動は実施できなかった。
出火当時、合足漁港付近で火災を目撃した女性は「パチパチと音がするかと思ったら、車で通りがかった人が『火事だ』と叫んでいた。初期消火も間に合わず、すぐに燃え広がったようだった」と話した。
午後1時すぎには、市消防団の全分団が出動。連日、総力を挙げた消火活動を行っており、疲労の色が濃い中での出動となった。
市は同2時20分に綾里地区全域の850世帯2060人、同32分に合足地域の23世帯54人に避難指示を出した。越喜来小、第一中、東朋中の各体育館、三陸公民館、リアスホール、蛸ノ浦漁村厚生施設に避難所を開設。午後7時現在で、第一中、リアスホール、蛸ノ浦漁村厚生施設、越喜来小、三陸公民館に合わせて519人が身を寄せている。越喜来のさんりくの園には福祉避難所が設置された。
越喜来小に綾里の石浜地域から家族5人で避難した70代男性は「家の方まで火の粉が飛んできていて、家も燃えてしまうかもしれない。これだけの火事は生まれて初めてだ。津波よりひどい。早くおさまってほしい」と話した。
同地域から避難した80代女性は「1人暮らしで、知り合いの車に乗せられて避難した。こんな火事は経験がない。どのあたりまで火が来ているのか、家が心配だ」と不安そうに語った。
綾里の小路漁港(田の尻地区)で孤立した6人(男女各3人)は、県警の警備船に乗って避難し、大船渡町の大船渡港(茶屋前地区)で下船。消防関係者から体調確認を受けたうえ、家族らの迎えを待った。
乗船した小路の熊谷由紀子さん(72)は「ものすごい勢いで燃え広がり、こんなに怖い思いをしたのは初めて。無我夢中で逃げた」、立根町の伊藤まり子さん(74)は「合足で火事だという放送が聞こえ、あっという間に小路まで来た。怖かった」と話した。
男性3人はいずれも気仙地方森林組合の職員。伐採作業で山に入っていた陸前高田市米崎町の30代男性は、「気が動転して逃げることで頭がいっぱいだった。漁港は、周りで火が出ていて煙がすごく、身動きがとれない状況だった。まずは助かることができて良かった」と胸をなでおろした。
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市は午後5時と同8時に記者会見を開き、渕上清市長は「懸命の消火活動を続けているが、綾里方面に延焼・拡大中。住家の焼失も見られ、情報収集に努めている。合足、綾里地区の住民は、すぐに命を守る行動をしてほしい。避難所では、地区の方、市職員が対応に努める」とした。
県も同日、災害対策本部を設置。開会中だった県議会本会議を中断して午後5時から会議を開き、達増拓也知事は「複数の住宅に延焼が広がっており、大船渡市や関係機関と連携して人命第一で対応する。人命や住宅被害にかかる情報の収集や火災の早期鎮圧に努めてほしい」とし、県民への火の取り扱い周知徹底に言及した。
内閣府は、相当数の住宅被害が見込まれることから、災害救助法の適用を決めた。
26日午後6時現在、鎮圧には至っておらず、27日も消火活動が行われる。同日、綾里小と東朋中は休校、綾里こども園が休園。三陸鉄道リアス線は盛―三陸駅間で運転を見合わせる。市議会本会議は休会する。