物心両面で避難者支援 民間企業や団体 炊き出しや入浴受け入れも

▲ 三陸公民館では朝からおにぎりや豚汁が提供された(27日午前7時41分撮影)

リアスホールでは、パーティションで避難者のプライバシーを確保(27日午前10時34分撮影)

 26日に大船渡市赤崎町合足で発生し、三陸町綾里へと延焼拡大した林野火災を受け、市は同日に綾里地域全域と合足地区の住民873世帯2114人に避難指示を発令し、市内6カ所に避難所を開設。火災発生から一夜明けた27日も、避難者らが不安な一日を過ごした。この中、避難所や市内では民間企業や団体などが物心両面の支援を始めている。

 越喜来小、第一中、東朋中の各体育館、三陸公民館、リアスホール、蛸ノ浦漁村厚生施設の各避難所には、市内の企業や法人から、食料品、飲料類、衛生用品などが届けられた。
 このうち、三陸公民館では、ホールを除く館内の全ての部屋で避難者を受け入れ、午前11時現在で250人が避難した。
 多くの避難者が、親類や友人に電話をかけて安否を確認していたほか、自宅がどのような状態なのかが分からないことや、確かな情報がつかめないことへの不安を感じている様子もみられた。
 また、越喜来小は体育館を使用せず、特別教室を開放。寒さへの対策は、同校の暖房機器と支援で寄せられた毛布で対応した。避難者は、地域ごとに振り分けた部屋に敷いた段ボールと毛布で睡眠をとった。
 岩崎地域から三陸公民館へ兄弟で避難した60代男性は「立て続けの火災で驚いている。自宅も危険な場所にあり、状況も分からず不安」と話す。
 石浜地域から家族4人で越喜来小へ避難した40代女性は最低限の貴重品をかき集めて逃げたが、卒業と進学を控えた子の制服や入学準備品には手が回らなかった。「住む家がなくなり、この先どうしたらいいか分からない。家族が無事だったことだけが救い。まだ実感が湧かない」と動揺を隠せない。
 不安が募る中でも、避難所では27日にも避難者への支援が行われた。朝には、三陸公民館で大船渡青年会議所によるおにぎりと豚汁の炊き出しが、越喜来小では地元の食堂や住民によるおにぎりとみそ汁の炊き出しが、それぞれ行われた。
 このほか、市内の入浴施設は、避難者らの無料受け入れを始めた。日頃市町の「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」は28、3月1(土)両日の営業時間を短縮し、無料入浴を受け付けることとした。三陸町越喜来の「夏虫のお湯っこ」は、身分証明書の提示を求めたうえで無料入浴を受け付ける。市社会福祉協議会(刈谷忠会長)も、立根町の市Y・Sセンター内の入浴施設を無料で開放する。身分証明書などの提出は求めない。
 このほか、赤崎町のおのでら接骨医院(小野寺輝院長)は消防関係者に対するウオーターベッドの無料提供や、けがの応急手当てを行う。市内の美容関係の事業者らも、避難者へのシャンプーなどのサービスの無料提供へ向けて動いている。


避難長期化による衛生・医療への懸念

 

 食料品は一定の配分が行われている一方、避難の長期化による衛生面や医療面への懸念も。トイレや水道はそれぞれ、避難所に備え付けられているが、入浴が困難な状況だ。また、新型コロナウイルスやインフルエンザも、いまだ猛威を振るっている。
 盛町のリアスホールには、27日午前10時現在で約100人が和室や会議室に避難したほか、屋外では住民とともに避難したペットも見られた。
 市は避難者ごとのスペースをパーティションで区切ることで、プライバシー確保に努める。同ホールでもこの日、田茂山一区公民館の住民ら約20人が避難者へ炊き出しを行った。
 一方で、避難者の中には持病のある住民もおり、毎日服用する薬や保険証を持つ間もなく逃れてきたという。
 同日は市赤十字奉仕団が避難者のケアに努めたほか、市内の医療従事者もボランティアで診察を行った。避難所では薬が不足している状況にあり、医療関係者が病院と連絡を取って移送するなど、対応にあたっている。
 医療ボランティアとして駆けつけた大船渡町の60代女性は「精神面の治療を行っている人もいて、定期的に薬を服用しないとすぐに悪化するおそれがある。一方的な診察はせず、相手の話をしっかりと聞き、心身の疾患に応じた適切な処置を施したい」と話した。
 三陸公民館でも同様の事態が起きており、この日は同公民館が越喜来、吉浜の両診療所と連携し、お薬手帳をもとに処方箋を発行。院外処方にも、市内のほかの薬局に取りに行くなどして対応した。