炎の猛威 建物にも爪痕 合足・綾里大火 小路で1人の遺体確認 延焼止まらず 赤崎で避難指示区域拡大

▲ 焼失した建物が見られる綾里の港地域(27日午前7時13分)

 大船渡市赤崎町合足地内で出火し、三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模火災は、発生2日目の27日、消火活動が展開された。同日午後6時現在、被害の全容は判明していないが、住宅被害は綾里地区内で少なくとも84戸とみられ、小路地内では1人の遺体が確認された。焼失面積は600㌶以上で延焼が続いており、合足と綾里全域で避難指示が続き、新たに赤崎町の大立、永浜、清水、蛸ノ浦、長崎、外口の6地域にも対象が広がった。現段階では、いずれの地域も鎮圧を待って避難指示解除を行う方針。住宅被害の拡大も予想され、市は応急仮設住宅整備が必要との認識も示す。(2、3、7面に関連記事)


 27日の夜明け前には、延焼したとみられる綾里白浜地域の山肌に、炎が確認された。日の出後は青空が広がったが、綾里一帯は霞がかったような煙に包まれた。
 市は小路、石浜、港、田浜、岩崎、野々前の各地域で住宅被害があり、特に小路や石浜地域での規模が大きいとみる。26日夜の段階で、84戸で焼損の可能性があるとしており、調査を進めている。
 小路地内では27日朝、道路上で男性とみられる1人の遺体が見つかった。大船渡警察署に搬送され、火災との関係を調べている。
 港地域では、まとまった区域で建物の焼失が確認でき、消火活動の放水で路面が濡れる中、黒焦げた建物の柱が立っていた。面的な延焼だけでなく、他地域では一部の建物のみが焼け落ちた光景も散見された。
 綾里小グラウンドには夜明け前から、県内外から消防隊車両が集結。青空が広がった時間帯にも、県外からサイレンを鳴らして駆けつけた消防車両が連なった。
 26日は強風でヘリコプターによる散水はできなかったが、27日は自衛隊や岩手、宮城、山形、福島、栃木各県と仙台市の各航空機が活動を展開。19日に綾里田浜地域で発生した林野火災以降、連日の活動が続く大船渡市消防団による現場での作業はなかったが、各屯所では消防団員らが車両やホースなどの管理に当たりながら、早期鎮圧を願った。
 27日も、合足地域と綾里全域の計873世帯2114人への避難指示が継続され、越喜来小や三陸公民館など8カ所(福祉避難所含む)の避難所への避難者は、ピークの26日午後10時ごろで計584人、車両370台となった。
 合足から西側へ広がり、山の尾根を越えて大船渡湾側への延焼が確認されたとして、同日午後4時45分に赤崎町の大立、永浜、清水、蛸ノ浦、長崎、外口の6地域にも避難指示を拡大。対象は合わせて467世帯1192人で、いったん閉鎖した第一中体育館をふたたび避難所とし、新たに県立福祉の里センターにも開設。蛸ノ浦漁村厚生施設と東朋中の避難所は廃止した。
 リアスホールには赤崎町民が続々と訪れた。東日本大震災の津波で全壊し、自宅を再建した大立の金野正博さん(78)は「再建した家を今度は火災で失うのではないかと不安でいっぱい。何事もないことをただただ祈るばかりだ」、蛸ノ浦の笹野正さん(72)は「ヘリやサイレンの音が鳴りやまず、気が休まらなかった」と話した。
 蛸ノ浦の70代男性は、妹と一緒に福祉の里センターへ避難。「きのうよりも煙が家の方に近づいて来た。飛び火などは予測ができない。消防のみなさんには連日頑張っていただいているが、今後どうなることか」と不安げだった。
 市は避難所利用者を把握しながら安否確認を進めており、親戚や知人宅に身を寄せている人の情報提供(担当・市地域福祉課、℡27・3111)を求めている。安否不明者の氏名は公表しない方針。
 綾里地区では停電が続いている。避難指示区間内の主要地方道大船渡綾里三陸線では交通規制を実施。三陸鉄道は盛―三陸駅間で運転を見合わせている。
 県は、応急仮設住宅の供給検討を始め、市も必要性を認める。先月供用を開始した大船渡町のおおふなと防災公園などを建設用地の選択肢に入れながら調整を進める意向も示す。
 27日午前の段階では、避難所へ身を寄せた人が体調を崩したといった報告はないという。確保が急がれる物資も現段階ではなく、協定などに基づいて民間団体からも支援の手が寄せられている中、会見席上、渕上清市長は「延焼がなかなか収まらず、避難対象地域を拡大した。避難所が混み合うことも予想されるので『お互いさま』の思いで運営に協力をいただきたい」と呼びかけた。
 綾里診療所、同歯科診療所は27日も休診した。吉浜診療所は28日、午前9時~午後5時と診察時間を拡大。赤崎小と東朋中はきょう28日まで、綾里小は3月7日(金)まで臨時休校とする。
 また、28日からリアスホール、三陸公民館、越喜来小避難所で臨時のごみ収集を行う。ほかの避難所は通常収集で対応する。

 

 

 住田町では、要請があり次第すぐに対応できるよう、避難所用にジェットヒーター2台、ファンヒーター20台など暖房器具を準備。広域避難も、世田米地区内の公共施設で受け入れ可能としている。人的支援は必要に応じて展開する。
 町婦人消防協力隊(佐藤菊子隊長)では、管内外の消防署員のために炊き出しを行う準備を進めており、状況を見ながら活動する。佐藤隊長は「何か少しでも力になれれば。一刻も早く火が消えることを願う」と話す。
 27日時点で、町内には綾里地区から10人余が身を寄せているという。