赤崎・綾里大火 焼失1200㌶ 影響長期化 避難指示 中赤崎にも拡大 消火続くも「2、3日中の鎮圧難しい」
令和7年3月1日付 1面

大船渡市赤崎町合足地内で出火し、三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模火災は、発生3日目の2月28日も消火活動が展開された。延焼は1200㌶以上に上り、赤崎町でも広範囲に影響が及び、新たに宿、後ノ入、森っこ、大洞、生形、山口の6地域にも対象が広がった。自衛隊や各県の防災航空隊などのヘリコプターが懸命の散水活動を行い、地上でも県内外から集結した消防援助隊が建物への延焼防止に当たるが、鎮圧のめどは立っていない。避難指示は、鎮圧確認後に解除とする見通しで、長期化への対応も求められる。
(3、7面に関連記事)
平成以降で国内最大に
28日は、出火地点から北西側に位置する綾里峠と清水合足トンネル間の尾根部分で燃え方が激しく、午前から自衛隊ヘリが集中的に海水を使って消火活動を展開。しかし、日没後の午後6時段階でも、大船渡町側から赤崎町方向を見ると炎が確認できた。
大船渡町の佐藤清さん(70)・孝子さん(65)夫妻は、同町の高台から双眼鏡を使って火災現場を眺めた。盛町に住む妹夫妻の所有宅が田浜地域にあるといい、「家が燃えているのではないかと妹が心配している。赤崎や綾里にも親せきや知り合いがたくさんいる。火事は本当に怖い。一日も早く収まってほしい」と不安げに語った。
間もなく、中赤崎地区の計415世帯957人に避難指示区域を拡大する防災行政無線が響き渡った。避難所に追加された大船渡中と猪川小では、職員が慌ただしく対応に追われ、同7時前から続々と市民らが訪れた。
大洞地域から大船渡中に避難した60代男性は「ネット配信を見てる限りでは大丈夫かなと思っていたが、緊急速報があったので避難してきた。早く終わってほしい」と話した。
27日までは西から東に風が吹く状態だったにもかかわらず、火の手は西側にも広がった。28日は南からの風に変わったほか、依然としてまとまった降雨がなく、気候条件でも厳しい状況が続いている。
地上消火活動は県内外から駆けつけた緊急消防援助隊が行い、1日はさらに増隊となる。体制規模が増大する中、地元消防関係者はスムーズに活動できるよう調整的な役割の業務が増えているという。住家は84戸に焼損の可能性があるとしているが、詳細は分かっていない。
同日午後5時からの記者会見で、市災害対策本部は鎮火の見通しについて「きょうも懸命の活動を行ったが、現状は変わっていない。2、3日中の鎮圧は難しい。山間地域で風向きが変わると地上隊が入っていけず、難航している」との見通しを示した。
延焼が止まらず、市民の立ち入りを制限する区域も広がっている。赤崎町内の主要地方道大船渡綾里三陸線では、警察官が蛸ノ浦方向に走行する一般車両を止め、ドライバーに「消火活動を行っています。ここからUターンしてください」と呼びかけた。避難者が「忘れ物を取りに戻りたい」といったケースも認めないという。
市では全地域とも、避難指示解除は鎮圧確認と同時に行う方針。住民からは「少しでもいいから様子を見たい」といった声も出ている。同本部では「気持ちはよく分かるが、現時点では延焼中のエリアが複数あり、警察との交渉も非常にハードルが高いと思っている。空中消火も行っており、もう少し様子を見ないと難しいのではないか」とし、理解を求める。
また、綾里地区の約600軒、合足の約20軒では停電が続く。停電復旧に関しても、市は鎮圧確認後となる見通しを示す。
避難所は市内11カ所に開設され、28日午後6時30分現在で857人、車両435台が利用している=別掲図参照。区域拡大や長期化に伴い多方面での影響が懸念される。市は避難者名簿は公開しないとしている。
市は知人・親戚宅への避難も含めた安否確認を進め、現段階で安否不明の特定者はないほか、「行方が分からない」といった家族の申し出はないという。市は引き続き、避難対象住民の安否情報を市地域福祉課(℡27・3111)に寄せるよう求めている。
市は焼失面積について、27日は「600㌶超」としていたが、延焼状況などを踏まえ、28日の記者会見では「1200㌶」と発表。出火した合足地域から西側の赤崎町内に加え、綾里田浜地域の東側でも広がった。林野火災では平成以降国内最大となった。
1日に予定されている大船渡、大船渡東、高田、住田各高校の卒業式は予定通り行われる。大船渡東高では、制服を持たずに避難した生徒が1人いたが、制服の製造先が無料提供する。
また、週末は、支援物資提供や炊き出しの申し出が増えることも予想される。現在は市役所内の同本部が電話などで受け付け、担当課に振り分けている。
県は被災世帯の住宅確保について、気仙地区の県営住宅で速やかに提供できる16戸の受け入れ体制を整えるとともに、ほかに受け入れ可能な戸数の確保に向けた調整を開始した。家賃は免除とする予定。
応急仮設住宅の整備は、協定を締結した建設関係団体と調整を進めているという。
県教委は5(水)、6(木)の両日に行う県立高校入試に関し、市内の生徒が今回の火災を理由として、11(火)、12(水)の両日に実施する追検査を希望する場合は受検可能とした。
町営住宅での受け入れ開始
住田
住田町では、町営住宅で被災者・避難者の受け入れを開始した。入居可能な住宅は計10戸。先着順で受け付けている。
入居できるのは、世帯での避難者は世田米の川向団地3戸、下有住団地1戸、上有住の八日町団地4戸。単身避難者は世田米の火石団地2戸。
川向団地は木造平屋、下有住団地、火石団地は木造2階建て、八日町団地は木造平屋2戸に木造2階建て2戸。
被災者・避難者が一時的に入居する際は家賃を無料とするが、水道光熱費は各個負担となる。避難者が自宅の状況を確認できていないことも踏まえ、当面は、り災証明書を不要とする。家賃が無料となる期間も火災の状況を見ながら判断していく。
給湯用ボイラーがないため入居者各個での対応となるが、町でリース業者を紹介する。
問い合わせは建設課(℡46・2115)へ。受付時間は午前8時30分~午後5時15分まで。当面は土・日、祝日も対応する。