延焼拡大防止へ懸命 赤崎・綾里大火 焼失面積1400㌶に 続く立入制限 情報不足で不安も

▲ 尾根を越えて赤崎町の西側に延焼する炎が大船渡町からも確認できた。予断を許さない状況が続く(1日午前5時36分)

 大船渡市赤崎町合足地内で出火し、三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模火災は、発生5日目の1日も、各地で消火活動が展開された。強風が続く中、焼失面積は1400㌶に上り、綾里地区では北部に拡大したことから隣接する同町越喜来の甫嶺東、甫嶺西、上甫嶺が追加され、避難対象者は市民の10%超に当たる4500人超に上る。避難指示区域内の立ち入り制限が長引く中、現地の情報不足に伴う不安増大も課題に。延焼拡大防止と早期鎮圧に向け、2日も空中、地上から大規模な消火活動を予定している。(3、7面に関連記事あり)

 

三陸公民館のホワイトボードには「情報不足」を伝えるメッセージも

 避難指示は、発生当日の2月26日時点では三陸町綾里の全域と合足地域だったが、27日に赤崎町の蛸ノ浦地区に拡大。28日は赤崎町の宿、後ノ入、森っこ、大洞、生形、山口の計415世帯957人を追加し、3月1日は新たに越喜来の甫嶺東、甫嶺西、上甫嶺の141世帯333人も対象となり、総計で1896世帯4596人となった。
 「さまざまな面でご支援いただいているが、現地の情報が得にくい。被災された方は自分の家、地域がどうなったのかを危惧し、そこが不安のもと。消火活動中で入れないのは理解しているが、関係機関から地域の情報をいただきたい。一つ一つ不安を解消していくことも重要」──。住民の避難生活が長期化する中、渕上清市長は1日、市役所を訪れた達増拓也知事にこう切り出した。
 現地の「情報不足」は各地で指摘されるようになった。避難所となっている越喜来の三陸公民館に詰める綾里地区公民館の村上芳春館長(66)も、「住民はSNSなどの映像を見て『地域が全滅したのでは』と不安になり、地元消防団が活動していた時は現地の情報を得て紹介していた。しかし、活動が消防援助隊に移ったことで、情報が途絶えた。やはり、自分の家、地域の現状が分からないのは一番の困りごと」と話す。
 自衛隊や県内外の消防援助隊などによる懸命の消火活動が続くが、延焼は止まらず1日朝は、大船渡町側からも赤崎町の炎が見えた。同日の空中消火で抑えたが、予断を許さない状況という。
 今出山山頂部では同日早朝、綾里地区北側の山林部で濃い煙が上がっている光景が確認でき、同地区では小石浜方向に延焼している。越喜来での延焼までは至っていないとみられる。2月27日以降に避難指示対象となった地域での建物被害は出ていない。
 避難指示拡大に伴い、主要地方道大船渡綾里三陸線は赤崎町普金の太平洋セメント大船渡工場前T字路付近~越喜来・泊漁港付近の区間で通行止めに。延焼だけでなく、上空からの散水活動に伴う安全確保の面でも、解除には慎重な判断が求められるという。
 赤崎町の中赤崎地域なども避難指示対象区域になることで、各種産業活動への影響も懸念される。市災害対策本部は1日の記者会見で「当初は綾里地区や合足地域と住宅の多いエリアだったが、だいぶ市街地に近づいてきた。経済活動に影響する部分も生じてきたので、避難指示解除に関しては段階的な解除も検討しなければ」との見通しを示したが、慎重な姿勢は崩していない。
 避難所は市内11カ所に開設され、1日午前11時現在で1144人、車両585台が利用している=別掲図参照。赤崎町で避難区域が拡大し、新たに甫嶺地域も加わったことで、前日から約300人増えた。一方、避難指示区域内にとどまっている人数は把握できていないという。
 市は知人・親戚宅への避難も含めた安否確認を進め、現段階で2050人程度という。引き続き、避難対象住民の安否情報を市地域福祉課(℡27・3111)に寄せるよう求めている。
 支援活動への関心も高まる中、市社会福祉協議会は2月28日、市総合福祉センター内に災害ボランティアセンターを開設。当面は市内外のボランティア活動希望者の受け付けや名簿作成、避難所などので支援ニーズの把握に当たる。火災鎮火を受け、被災者の支援ニーズを把握しながらボランティア活動希望者とのマッチングを図る。
 綾里小は7日(金)まで、赤崎小と東朋中も4日(火)までそれぞれ休校する。東朋中は2日以降、受験が近い3年生33人を対象に学習会や高校入試の事前指導を行うことにしている。綾里こども園は当分の間は閉園となり、在園児は保育者が希望する越喜来こども園などで保育する。