「自分たちにできることを」 火災免れた塩蔵ワカメ販売へ 綾里・マルカツ水産 東京の本県アンテナショップで 売り上げの一部は寄付
令和7年3月6日付 7面

大規模火災で被害を受けている大船渡市三陸町綾里にある㈲マルカツ水産(佐々木晶生社長)は6、7(金)の両日、東京都中央区銀座の本県アンテナショップ「いわて銀河プラザ」で塩蔵ワカメを販売する。会場では募金も呼びかけ、ワカメの売り上げの一部と合わせ義援金として寄付するといい、火災はいまだ鎮圧に至らず、自社の状況も正確に把握できない中でも、「できることをやるしかない」と、地域の復興を見据えて動き出している。(清水辰彦)
同社では県内最大規模のワカメ養殖を手がけており、収穫したものは理研食品㈱に全量出荷している。今年は、低気圧で被害を受けた昨年を大幅に上回る約200㌧の生ワカメ出荷を予定しており、順調に生育していた中で火災が発生。ワカメ収穫は例年、今が最盛期だが、佐々木社長(32)は「綾里にさえ入れるようになればなんとかなるが、今のところ再開の見通しは立たない」と生産への影響を懸念する。
佐々木社長や従業員らも、避難指示が発令されているため避難生活を余儀なくされており、会社や自宅の状況は直接自分たちの目で確認できてはいない。
こうした中、同社では火災発生前の1月~2月にかけて間引きし、塩蔵したワカメを大船渡町にある大船渡湾冷凍水産加工業協同組合の冷蔵庫に保管していたことから、「地域のためにできることをやるしかない」と、販売に向けて佐々木社長をはじめ従業員たちが立ち上がった。
5日には、同町の水産加工業者の作業場を借りて袋詰め作業を急ピッチで行い、200㌘詰めの袋約2400個を用意。ダイビングショップ「みちのくダイビングRias」(越喜来)の佐藤寛志さん(50)の車に次々と詰め込み、佐々木社長と従業員、佐藤さんの4人で東京へと向かった。
マルカツ水産では、所有する漁船5隻のうち、メインで使っている2隻は大船渡町側へと移動させたが、残りの船や加工場、資材倉庫、さらに自宅の状況ははっきり分かっていない。
「地域の年配漁師の人たちも悲しんでいる。なんとか俺たち若者で後押ししてあげられないかと思った」と佐々木社長。「この状況で大変な思いをしている人もたくさんいるが、前を向いてみんなで頑張っていきたい」と力強く語る。